2024年5月28日(火)、第7回Borderless Onsite Meetingを国際局グローバル・コモンズとの共催で開催しました。今回は、カザフスタン出身の第5期生NipCAフェローであるトゥルスナリエヴァ・アジャルさんを招き、「Steppe Culture of Kazakhstan」というテーマでご講演いただきました。

カザフスタンは石油や天然ガスの産出国であり、首都アスタナには、黒川紀章氏の設計による未来都市を思わせるような風景が広がっています。しかし、今回はそうした側面よりも、カザフスタンの草原文化に焦点を当てたプレゼンテーションをしていただきました。

発表の中心テーマである草原は、カザフスタンの人々にとって、生活・自然・歴史・文化、そして精神の基盤となる重要な存在です。自然遺産として有名な北カザフスタンのステップと湖群「サリアルカ」は野鳥観察の名所で、馬の飼育発祥の地ともされています。また草原は、かつてチンギス・ハンの戦士たちがキャンプを張った地であり、カザフ・ハン国の本拠地でもありました。さらに、シルクロードの主要な交易路としても重要な役割を果たしてきました。このような草原について、東洋学者ワリハーノフは、「広大で自由な空間、カザフ人の自然の故郷、人々の力の源、そして精神的自由の象徴」と表現しています。さらに発表では、カザフスタンの画家KASTEEV Abylkhan氏の作品を通じて、草原の風景も紹介されました。

ほかに、中央アジアの遊牧民生活の変遷をたどる手がかりとして、世界遺産に登録されたタムガリの「野外寺院」ともいえるチベット図像の岩絵群や、紀元前8世紀から20世紀初頭までの遊牧文化の特徴を伝えるカザフスタン中央国立博物館の展示も取り上げられました。

プレゼンテーションの最後には、アジャルさんがカザフスタンの伝統楽器であるドンブラを演奏し、「AKKU」(カザフ語で「スワン」)という曲を披露してくださいました。これにより、参加者はカザフスタンの文化を直に味わうことができました。