2021年6月18日(金)、第25回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回は筑波大学人文社会系長である関根久雄教授を講師にお招きし、「SDGsの視点から太平洋島嶼地域の開発問題を考える」と題する講演をしていただきました。
関根先生は大学卒業後、民間企業勤務を経て青年海外協力隊員として、メラネシアのソロモン諸島に派遣・勤務されたという経験をお持ちで、その後は太平洋島嶼国における社会開発と地域文化のかかわりについての研究を長年行われています。実務家・教員としての豊富な経験があり、特に近年は、SDGsの観点から国際開発についてのご研究に取り組まれています。今回は、ソロモン諸島の事例を中心に、ミクロネシアのマーシャル諸島の事例も交えつつ、太平洋島嶼国におけるSDGsの目標の読み替え、地域固有のSDGsの創造的実践の必要性についてお話しいただきました。
太平洋島嶼国にはメラネシア・ポリネシア・ミクロネシアの三つの領域があり、これらの地域は、大陸からの物理的な距離や資源の有無に程度の差こそあれ、辺境性・狭隘性・拡散性という条件からくる、経済開発を通じた経済成長における困難を抱えているというお話がありました。この地域における基本的な経済活動は、出稼ぎ労働者などからの海外送金や外国・国際機関からの開発援助などに代表されるレント、観光や航空などの産業、そして、人々の地縁・血縁に基づいた相互扶助的で親密な関係性での活動、すなわちサブシステンス経済があるとのことです。近代西洋的で物質的な物差しで測られる太平洋島嶼国の貧しさと、サブシステンスに基づく精神的な「豊かさ」の間を行き来する住民の心や、自国の先行きや様々な国から支援を受けることそのものを自分たちでコントロールするという「自律」志向をいかに、地域固有のSDGsの創造的実践に落とし込むかなど、豊富な事例を交えて解説していただきました。
この講演会の模様は令和3年6月18日~令和3年7月4日までmanabaにて動画配信されました。