令和4年1月11日(火)、第2回 Special Lecture and Discussion “The Road to Digital Transformation to Change Society”を開催しました。今回は、中央大学ELSIセンター所長で同国際情報学部 教授である須藤修氏を講師にお招きし、「日本の電子政府化がなぜ必要なのか?-IT人材の民への偏在脱却と公共DXの発展-」と題する講演をしていただき、その後、参加者をまじえてのディスカッションを行いました。

須藤先生は、内閣府の「人間中心のAI社会原則会議」の議長を務められており、日本のDX研究の第一人者でもあります。今回のご講演では、デジタル革命(DX)によるパラダイムシフトの中で起こることが予想される変化について説明していただいた後、現代の日本に不足していることを諸外国との比較も交えつつお話していただきました。

日本政府は、全ての人々にDXや科学技術の恩恵を届けるべく2021年に計画をスタートさせています。DXの実現は、蓄積された膨大なビッグデータをAIが解析し、人間社会にフィードバックされる「Society 5.0」を目指すために必要なことです。この社会には、IoTによって得られた様々な情報を基に、サイバー空間でリアルを再現して未来をシミュレートする「デジタルツイン」や、現在存在している空間とは違う空間を作り出す「メタバース」といった概念が含まれています。これらに共通することは、私たちの生きるフィジカルな世界のデータをサイバー空間で分析し、そのデータをまたフィジカル空間に活用するCPS(Cyber Physical System)が関わっていることです。

しかし、このような社会を目指すための課題や障壁も多く存在します。例えば、DXの基盤となる通信網である5Gの、地方や過疎地での展開の採算性などがあります。また、行政や一般企業等でDXを実現する際にも、マイナンバーに対する世論や、AIに分析させるための情報の形式が自治体や機関でバラバラであることが課題として挙げられます。さらに、諸外国と比較したときに見られる日本の大きな課題として、ICT人材がIT企業に集中しており、DXの推進に関する具体的な業務の遂行をIT企業に依存していることが挙げられるとのことです。
須藤先生のご講演後には、いかにしてICT人材の偏りを小さくしていくか、サイバーセキュリティの課題やメタバースにおける人格の取り扱いなど、多岐にわたる質問が寄せられ、活発なディスカッションとなりました。

この講演会の模様は令和4年1月11日~令和4年1月23日までmanabaにて動画配信されました。