海外語学研修ロシア語Cレポート

総合学域群第1類1年 新川朝日

「研修参加の動機」「カザフスタン共和国についての考察」「研修前後で変わったこと、成長したこと」

  • 研修参加の動機

私が所属している総合学域群の強みは、文系理系問わず幅広い分野の学問に触れることで学際的な視点を持つことが出来るようになることだと思う。そのため、今までに経験したことが無いことや、今までの自分では挑戦しなかったような物事に積極的に参加することが、何よりも重要だと考えたことが一番の理由である。他にも、自分が一年間学習してきたロシア語が、実際にロシア語圏で生活する人々にどれほど通用するのか試してみたかったことや、中央アジアの文化や風土に興味を抱いたことが、今回の語学研修に参加した動機である

  • カザフスタン共和国についての考察

・魅力

ナルホーズ大学で開催された日本語弁論大会が終了した後、同じ場所で開かれた食事会で、質問者として弁論大会に参加していた近藤さんという日本人の方とお話をすることができた。近藤さんは現在はアルマトイに居住しているらしいが、今までにはアスタナやシムケントにも数年滞在したことがあるらしい。近藤さんが言うことには、カザフスタンではどの都市でも人と人との結びつきが強いという(特にシムケントは昔ながらの町並みや伝統がそのまま残っているために地域共同体の結びつきも強い)。夏に、子供をベビーカーに乗せて散歩していたところ、通りすがりのおばあさんが「危ないから」と子供の足に靴下を履かせてきたこともあったという。

このようなことは現在の日本(特に都市部)では考えられないことである。現代の日本では、自分にとって何の関係もない人に対して全く関心を持っていない人がとても多くなってきている。その理由の一つとして挙げられるのが、地域共同体の崩壊である。これは、都市への人口流入が激しさを増したり、少子高齢化の影響で自治体や子供会の機能が低下したりすることが原因となって生じる現象である。

今日までアルマトイで一ヶ月あまりを過ごしてきたが、その短い期間だけで何度も「全くの他人」に助けられたことがあった。私が道に迷い、スマートフォンの充電も切れてしまったためどうすることも出来ず困っていた際には、通りすがりの学生が話しかけてくれたこともあった。

アルマトイの、経済的な発展度合いと地域共同体の結びつきの強さのアンバランスが、私がこの都市に惹かれた理由だと感じた。

・大気汚染

アルマトイの空気の悪さは凄まじい。3月の半ばに、アルマトイの南東部にある「コクトベ」 (図1、2)という展望台を訪れた際には、大気汚染のせいで街がガスに飲み込まれてしまっており、何も見ることが出来なかった。

この大気汚染が発生する理由としては、人々が低価格の中古車を多く買い求めること、交通渋滞が頻発していることが挙げられる。また、地形を見ると、周囲を山で囲まれているために風が非常に弱く、空気が停滞してしまうことや、山の近くに位置しているため標高が800メートルほどあり、車のガソリンが不完全燃焼を起こしてしまうことが分かる。地形的にはメキシコシティのような都市と似ているのかもしれない。

【図1 コクトベ 展望台】

【図2 ゴンドラからみたアルマトイ】

・傘

カザフスタンの人々は雪や雨が降っていてもほとんど傘を差していないことに気づいた。そこで、カザフ人の友達に「なぜあなたたちは傘を差さないのですか?」と質問してみたところ、「傘を差すのは面倒くさい」という返答を受けた。私は以前、イギリスの人々は傘を差さない、と耳にしたことがある。それは、天候がめまぐるしく変化することが理由であるらしい。私は地理や天気には詳しくないが、おそらくカザフスタン(少なくともアルマトイ)もイギリスと同じように天候が変わりやすいと思われる。

・性格

カザフスタンの人々は、様々なことを緩慢に、境界線を曖昧にしてのびのびと生活しているように感じられた。私がカザフスタン以外の国のことをよく知らないだけで、実は日本が世界の国々に比べて物事にキッチリしすぎているだけかもしれない可能性はあるが、カザフスタンの人々は効率を求めすぎていないように感じた。

カザフスタンの人々がみな集合時間に遅れてくるという話を聞いたときは驚いた。3月初頭にカザフ国立大学の学生たちと一緒にバザールに行く計画を立て、集合時間を14時に設定したのだが、集合時間になってもカザフ国立大学の学生は一人しか来ていなかった。その来ていた一人も、「日本人が時間に厳しいと言うことを知っているから早く来た」と言っていた。私は以前「家でパーティー等を開く際は指定された時間に遅れていくことが普通だ」と聞いたことがあったのだが、まさか家以外の、全ての集合時間に遅れて行くものだとは知らなかった。この遅刻は、ある種のマナーのようにも思える。このように、時間に対してルーズなことを求められるような文化で育った人は、おおらかで余裕がある人になるのではないか、と考えた。

  • 研修前後で変わったこと、成長したこと

今までの自分は、何か物事に取り組む際には成功までの道筋をしっかりと定めてから動き出すことが多かった。実際、高校生まではそれでほとんどのことがうまくいっていたと思う。しかし大学生になって、受験勉強のように答えがある問題ではなく、答えがあるかも分からないような学問に取り組むことを求められるようになってからは、答えまでの道筋の不確かさを気にして積極的に行動することが出来なくなっていた。そこで今回の語学研修では、頭であれこれ考えるよりもまず先に行動することを心がけた。街で入ってみたいレストランがあれば、自分の語学能力の心配などをしないでとりあえず体当たりしてみたり、ロシア語の先生と積極的にコミュニケーションを取ったり、様々な挑戦をした。アルマトイに来て一ヶ月が経った今、私は研修前と比べて自分の行動に自信を持つことが出来るようになったように感じている。もちろん全ての挑戦が成功したわけではない、レストランで店員の話している内容が全く分からなかった時もあった。しかし、その失敗のおかげで得ることが出来た学びがたくさんあったことに気づくことができた。これらの経験が自分の大きな財産になると思う。