ロシア語・カザフ語語学研修レポート

  野村ルイナ

1.はじめに

2/16~3/23の間、カザフスタンにて行われるロシア語・カザフ語語学研修に参加した。ここでは筆者が実際に経験したことに関して、特に食事、ロシア語の学習、等について述べる。

2.現地での食事

現地ではホームステイ先に滞在した。朝食、夕食はホームステイ先で、昼食は大学のカフェテリアでとることが多かった。

食事はパン(サムサやバルサック、ピロシキなどの揚げたパンの他、黒パン、白パン、レピョーシュカなど。種類は日本と比較にならないほど多い)、乳製品、肉が主体で、野菜が極端に少ない印象を持った。非常に高カロリーであると思われる、、が、美味しい。物価は日本とさして変わらないか、少し安いか、だが肉などについてはかなり安いのではないかと思われる。カザフスタンの料理とロシア料理が混在している印象を受けた。ホストファザー曰く、「カザフスタンではロシアの料理を食べるし、ロシアでもカザフスタンの料理を食べる」との事。ホストファミリーは肥満の予防のために食事の量を少なくしていた。

なお、食あたりになることは無かった。水はフィルターを通して飲めとの事だったが、試しに通さずに飲んでみたところその時は問題なかった。筆者は体重が2㎏程度増えた。。。

 

図 1レピョーシュカ               図 2 お気に入りのパン屋さん

図 3パン屋さんで買った             図 4アイス

3.ロシア語の学習

現地では週に6回のロシア語によるロシア語の授業があり、現地のロシア語学習者とともに授業を受けた。筆者が参加したクラスは昨年の9月から開講されたクラスであり、私が参加した時点では6格すべて、不完了体、完了体は既に既習であり、その実用的な練習、日常会話で用いるシチュエーション別の会話、6格の変化、用法の復習、もしくは語彙などに関して学習を行った。宿題は毎日出され、決して少なくはないが現実的な量ではあるためフレーズ暗記などを通して実用的なロシア語が身についた(気がする)

授業の定着度は人によって異なる印象があった。個人的に重要だと思うのはロシア語話者が実際どんな状況でどんなことを言っているのかを観察することである。以下に例を挙げる。

図 5ロシア語の授業

図 6ロシア語の教科書

ホームステイ先で楽器の練習をしていたところ、部屋にアイロンをかけにホストブラザーが入ってきた。彼は私の演奏を眺めて、プリコールナ(後で調べたところПрикольноという単語なのでは、と分かったがその時はそう聞こえた)と言った。その時、意味は分からなかったが褒め言葉、すごい、とか、かっこいいなどの類の言葉なのだろうと思った。また別の日に私がさかなクン的な、魚の帽子を買って別のホストブラザーに見せると彼もまたその時「プリコールナ」と言った。

図 7 прикольноな帽子

この2つの事例から恐らく「プリコールナ」は褒め言葉で、日本語のかっこいい、や、すごい、などよりも対象を選ばない、「いいね」くらいの意味合いなのではないかと思った。そこで試しに、現地のロシア語話者に旅行の写真を見せられた時にこちらから「プリコールナ、、?」と言ってみた。相手の反応は「Прикольноで合っているよ」のようなものだった。正確なニュアンスを完全に把握したわけではないが、褒め言葉としてПрикольноという語彙が存在することが分かった。

現地に行くことの良さは授業で習ったことは勿論、ホストファミリーや通行人、友達が口にしていた言葉をすべて例文として使いかたを推測することが出来る点、そして実際に現地人に言ってみることで自分の思う用法が正しいかを逐一確認することが出来ることだと思う。

現地に居た際は今日あった出来事、などの話したい話題で必要な単語や表現を事前に調べて手の甲に書いて夕食に臨むなどした。単語は一回で覚えられるものは恐らく1割もないが、単語への単純接触回数の母数を増やすことでその1割を増やした(つもり)。

帰国してからのロシア語の授業ではロシア人教員が何を言っているか分かるようになって少し感動した。

4.振り返り

研修内での主に関わりがあった人々としては、大学における英語講義、ホストファミリーとの会話、ロシア語学習者との交流、などが挙げられる。

授業を一緒に受講したロシア語学習者は中国語話者、韓国語話者、日本人、トルコ人など異なる国籍や年齢、背景を持つ学生が集まっていた。中国、ウルムチから親戚のもとに引っ越してきたカザフ人、カザフスタンに住み始めたためロシア語の学習を始めている生徒、など大学や日本の中の環境で出会うことはないような多様な生徒が在籍していた。

こういった人々やホストファミリーとの会話の中では、日本人との会話に比べて、必然的に自らのバックボーンや日本での文化や風習を話すことが多くなる。他にも、さらに踏み込んだ話題として、日本とその周囲の国の国際関係、広島・長崎への原爆投下に対する認識など日本に関わる歴史的事象についても意見を求められたことがあった。

日本に居ると「自らが日本人である」ということは自明の事でありすぎて、問題にされることは無いが、海外に出れば私は紛れもなく日本人であり、日本の文化、歴史や国際関係について一定の認識や見解を持つことを求められることを、現地や他国の人々と交流することを通して認識した。

現状自分が持つ知識は一般論の域にとどまっており、自らの意見を述べる事や、他国との比較、議論をする域には至っていない。このような国際的に「日本人」として最低限求められるリテラシーの必要性を強く意識した。

カザフスタンでの公用語はロシア語・カザフ語であるが、このような話題を多国籍の人々と話すとき、最も通じる言語は英語であった。英語はネイティブとの会話だけでなく、非ネイティブ同士の意思疎通において最も意義を持つ言語であると言える。最低限英語で、そして最終的にはロシア語で自らの意見を述べることが出来るようになれば海外で、そして中央アジアで求められる日本人としての役割は果たせると思われる。

個人的にやっておけばよかったと思うのはまず第一に単語の学習だが、現地での学習量と意欲が一番大事であると思われる。英語に頼るべきではないが、社会問題などの難しい話をするとき、英語は必須であると思われる。

持って行っておけばよかったと思うものはモバイルバッテリー、、、。充電が無くなると比較的面倒なので。

5.結び

個人的には本研修は私にとって非常に有意義であった。日本に居るままではありえないほど短期間でロシア語の運用能力が向上したし、日本では会うことも、存在さえ気づかなかったであろう人たちに会えた。文化は確かに違うが少なくとも現代の都市に生きる我々の間で、何を嬉しいと思い。何を悲しく思うかは大きく違わないのではないかと私は感じた。そう分かってから知らない人と関わることに怖いことは無くなったように思う。

本当に貴重な時間を過ごすことが出来た。帰国して1ヶ月近く経つが、いまだにふとカザフスタンであった人や食べ物のことを思い出す。

参加を迷っている人が居れば、ぜひ行ってみてほしい。私は私の考えたことや気持ちをここに文字に起こすのが、とても不可能に思えて億劫になるくらい、この経験を素敵なものだと思っている。

 

図 9 3月に雪が降った    図 8 в магазине

 

 

 

 

 

図 10 家から見た景色