2021年5月21日(金)、第24回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回はJICAブータン派遣専門家、武蔵野大学客員教授である山田浩司氏を講師にお招きし、「内陸山岳国ブータン向け開発協力の展望」と題する講演をしていただきました。今回の講演会は2021年度最初の講演会となりましたが、学外からの参加者も多く、70名を超える方が本講演会を聴講しました。また公開講演会シリーズとしては初めて海外からの配信、現地ブータンよりご登壇していただきました。

山田先生はこれまでJICAの事業を通じて、ブータンだけでなくネパールやインドなどのアジアの国々で国際協力に従事されてきました。今回の公演では2016年より3年間ブータン事務所長として、現地の開発協力にご尽力されたご経験をお話していただきました。近年の開発協力における流れと課題を踏まえたうえで、現地にあるリソースを最大限に生かす協力の形として、僻地教育とモノづくりに関する事例を紹介して頂きました。

ブータンでは高地民の生計向上と教育拡充というのは重要な優先課題として位置付けられいるということで、2019年に試行的に実施したウィンターキャンプという教育支援事業をご紹介していただきました。ちょうど公開中のブータン映画「山の教室」で描かれていたルナナに住む子供たちが冬の間中山間地に降りてくる間行った補講プロジェクトで、その後も引き続き別の地域で実施されているとのことです。このプロジェクトを通じ、実は同じブータン人同士でも高地民との交流や認識があまりないという実態が見えてきたそうです。またこの活動を各所で続けるうえで、教員として教育活動に従事する人材を確保するという課題があるそうです。

またモノづくりのケースとしてブータン初のファブラボの設置についてお話しいただきました。ファブラボは市民が自由に利用できるハイテクのデジタル工作機械をそろえた工房です。作りたいものを作りたいようにカスタマイズして作ることができるのが魅力ですが、実はそれ以上に世界中のファブラボとネットワークでつながることによって、経験のある人たちからアドバイスを受けて、自分で物を作るということができる利点があるそうです。物理的にモノ運ぶ必要がなく、現地で作ることができるということで、山が多く地方へのアクセスの悪いブータンのような国にこそ可能性を感じるプロジェクトだと感じました。「誰一人取り残さない」をテーマとしたSDGs。今回の公演ではGoal 4の「質の高い教育をみんなに」とGoal 9「産業と技術革新の基盤を作ろう」に関わるお話をしていただきました。

この講演会の模様は令和3年5月24日~令和3年6月6日までmanabaにて動画配信されました。