2025年10月27日(月)、第16回Borderless Onsite Meetingを開催しました。今回は、NipCAフェロー6期生で国際公共政策博士後期課程のファランギス・ダヴロノヴァさんが「タジキスタン:歴史、民族、文化」というテーマで魅力的なプレゼンテーションを行いました。ファランギスさんは、豊富な映像と語りをとおして、参加者たちをタジキスタンの世界へと引き込みました。そこは、ペルシアの伝統やイスラム文化、そしてソ連時代の歴史が、風景や言語、日々の暮らしの中で重なり合っている国です。

プレゼンテーションの冒頭で、ファランギスさんは聴衆に、アフガニスタン、中国、キルギス、ウズベキスタンに挟まれた文明の交差点として、古代と現代が共存するタジキスタンを思い描くよう呼びかけました。その後、タジキスタンの重層的な歴史を辿り、何世紀にもわたるその歩みを紹介していきました。ファランギスさんは、アケメネス朝・ササン朝の時代から話を始めました。現代タジキスタン地域はペルシア世界の一部であり、言語や芸術において、今日でもその名残が感じられます。7~8世紀に続いたイスラム時代は、新しい学問、法制度、文学の形をもたらしました。サーマーン朝の興隆は、その首都ブハラやサマルカンドを中心に、タジク語とタジクのアイデンティティにとって黄金時代と紹介されました。この時代には、現在国の通貨にも名前が刻まれているイスモイル・ソモニのような人物も登場しました。19世紀のロシア帝国の拡大と、後のソ連時代に、タジキスタンは大きな変革を経験しました。教育、都市計画、世俗的な統治が社会を大きく変貌させる一方で、ソ連的な近代性は伝統的な慣習や信仰と折り合いをつけながら共存していました。1991年の独立後、タジキスタンは1992〜1997年にかけて壊滅的な内戦を経験し、その後は平和構築と国家アイデンティティの再構築に取り組む長い過程が始まりました。この努力は、現在に至るまでポストソ連時代のタジキスタンの在り方を形作るものとなっています。

歴史の話を越えて、プレゼンテーションではタジキスタンの文化が工芸、音楽、もてなしの伝統を通じて紹介されました。ファランギスさんは、スザニ刺繍、絨毯織り、木彫りを、忍耐力や創造性、職人技を表現する芸術形式として強調しました。ユネスコに認定されている古典音楽ジャンルのシャシュマコムは、リズム、詩、神秘主義を融合させ、タジキスタンの芸術的伝統の精神を体現していると紹介されました。ファランギスさんは、家族や地域社会が社会生活の中心にあり続けていることも説明しました。客人はお茶や果物、菓子でもてなされることが多く、これらの所作は温かさと敬意を象徴しています。

ファランギスさんはまた、タジキスタンの注目すべきスポットを映像で紹介しました。国立博物館や優雅なナウルーズ宮殿から、ドゥシャンベ中央モスクやイスマーイリーセンターまで、さまざまな場所を巡る内容でした。これらのランドマークはそれぞれ、ペルシア、イスラム、近代の要素を融合させており、タジク文化が常に新しい影響を受け入れつつも伝統に根ざしてきたことを示している、とファランギスさんは説明しました。

都市を越えると、タジキスタンの風景にも独自の物語があります。東部には『世界の屋根』と呼ばれるパミール山脈がそびえ、雪に覆われた山々と広い空を背景に、標高の高いムルガブの町での暮らしが続いている様子が紹介されました。さらに、北部のヤグノブ渓谷では、古代ソグド人の子孫が今もヤグノビ語を話し、中央アジアでも最も古い文化的伝統の一つを今に伝えています。ファン山脈には、イスカンダルクルやハフト・クルなどの澄んだ青い湖があり、自然の美しさと、タジクの人々の静かな精神性の両方を体現していると説明されました。

締めくくりに、ファランギスさんはタジク文化を、過去と現在、伝統と変化の間で生き続ける対話のようなものだと表現しました。ルダーキやルーミーの詩から、スザニ刺繍の鮮やかな色彩、そしてシャシュマコムの心に響く旋律まで、タジクの遺産は、芸術や言語、信仰を通じて幾度もアイデンティティを再構築してきた人々の、しなやかで強靭な姿を物語っていると述べました。

彼女のプレゼンテーションは、参加者にタジキスタンを単に紹介するだけでなく、中央アジアの山々がより広い世界と結びついているように、文化も記憶であると同時に架け橋でもあるのではないかと参加者に気づかせる内容となっていました。