筑波大学 社会・国際学群 国際総合学類
黒田 俊
無限に広がるような草地に家畜が放牧されている牧歌的な景観、山脈に囲まれ古代の遺構が沈むイシククル湖、旧ソビエト連邦時代の構造物が残る町並み広がる首都ビシュケク、そんな語り尽くせないほど多くの魅力を持つキルギス共和国。そんな山間の小国で、私はこの国の観光における強い潜在力を2週間いのいよぶ研修渡航で感じることができた。その理由としては、親日国でありイシククル湖などの観光資源が豊富であること、遊牧民族の文化に触れつつもロシア語圏の文化にも触れることができる特異性などがあげられる。
研修ではJICAのプロジェクト視察や国連事務所の訪問、ビシュケク市内でのフィールドワークや、イシククル地方への旅行を通じて、キルギスをとりまく国際情勢や開発だけはなく、観光開発の現状や問題点も学ぶことができた。現地の観光開発の問題には、ソフト面とハード面の双方の取り組みが求められている。
まずソフト面の問題としてあげられることは、ほとんど英語が通じないことだ。現代世界では「どの国でも英語が通じる」と渡航前の私は漠然と考えていた。しかしキルギスでは簡単な英語ですら通じず、すべてのコミュニケーションにロシア語かキルギス語が必要となる。ロシア語圏以外からの集客を望むには、通訳等の人材育成が不可欠と感じた。
そしてハード面の問題は移動・交通手段だ。首都のマナス国際空港の国際線就航都市は、ほとんどがロシア連邦にあり、日本やその他アジア諸国との直行便はほぼ存在しない。一方、ビシュケク市内ではYandexTaxiやNambaTaxiなど、スマホのアプリを使った自動車配車サービスが発達しており、外国人でも市内移動は容易である。しかし、一歩ビシュケクを離れるとマルシュルートカ(乗合バス)や個人タクシーを利用せざるを得ず、言語が不自由な個人での移動は困難で、交通インフラのさらなる普及や改善が望まれる。以上の問題を解決するためには多大な労力が必要となる。しかし、キルギスという国が日本人の中でもっと認知される様になれば、観光が主要産業となる可能性は非常に高いと確信する。 私は今回の研修でキルギス並びに中央ユーラシアの魅力に取り憑かれ、次の早春にはカザフスタンでロシア語研修に参加することになっている。この地域をもっと知り、理解を深めることで日本と同地域へ何らかを還元できる人材への成長を目指し、これからの学修を進めていきたい。