2020年2月18日に公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」の第9回として、「哲学・政治学科についての発表」「国民意識の現代化におけるシンボルの役割」「現代カザフスタン女性のイメージ:文化、伝統と社会的地位」についてカザフスタンのカザフ国立大学より2名のゲストをお招きして、筑波大学中央図書館にて英語の講義を行っていただきました。
まず、アリヤ・マサリモヴァ教授がカザフ国立大学の哲学・政治学科についての発表を行いました。当学科の歴史は1947年の心理学・論理学部の創設までさかのぼります。現在では6つの学部があり、1691名の学生と40人の留学生が所属しています。当学科には数々のプログラムがあり、海外の著名大学とのダブルディグリープログラムもあります。マサリモヴァ教授は筑波大学と新たな教育プログラムを創設したいとの希望を語りました。
次に、マサリモヴァ教授は共同研究プロジェクト「国民意識の現代化におけるシンボルの役割」についての発表を行いました。このプロジェクトはカザフスタンの現代の文化に焦点を当てています。グローバリゼーションで転換と再解釈に対する疑問が生まれる中、カザフスタンの人々は新たな環境に順応せざるを得ませんでした。このプロジェクトの目的は、カザフスタンの人々のアイデンティティがどの方向に変化しているのか、そしてどのような価値を残そうとしているのかを探ることです。疑問点のひとつに、どのシンボルが精神的、文化的統合の基礎となるのかという問題があります。
シンボル研究プロジェクトの発表はナジム・バスキンバイェヴァさんに続きました。バスキンバイェヴァさんはカザフ国立大学博士課程で学ぶ学生で、カザフスタンのシンボルのひとつ「ナショナル・オーナメント」を紹介し、それがいかに現代の生活でも様々なものを作ったり装飾したりする際に使えるものかをお話してくれました。服、家具、ロゴ、お土産、宝石、食器、お菓子など全てにナショナル・オーナメントが使えます。オーナメントは建築、植物、貨幣にも見られます。カザフスタンの国旗や国章、都市の軍隊のコートにもあります。
バスキンバイェヴァさんの次の発表、「現代カザフスタン女性のイメージ:文化、伝統と社会的地位」でバスキンバイェヴァさんは、カザフスタンの女性の役割がどのように変化していったのか、1917年の革命からソビエトの時代、そして独立まで歴史を追って説明しました。発表では現代カザフスタン女性のイメージを3つに分類し、紹介しました。「伝統的女性」、「西洋女性(セルフメイド型とバービー人形型にさらに区分される)」そして「イスラム女性」です。伝統的女性は主に田舎の家父長制の家庭に住む女性のことです。彼女らは伝統的な奥ゆかしい服装をして、専業主婦か伝統的な女性の仕事である教師、医療関係、レジで働いています。西洋女性は都市の一般家庭もしくはミレニアル世代に見られます。セルフメイド型西洋女性は教育を受けていて、多言語を話すこともあり、経済的に独立していて、志が高く、体型の維持にも関心があります。バービー人形型西洋女性は自分の外見に自信がなく、SNSを多用します。イスラム女性は宗教的な家庭やアラブ系の大学の卒業生に見られます。彼女らはヒジャブ、ブルカもしくはアバヤを着て、限られた職業、社会交流の中で暮らし、夫に頼り切った生活をしています。こういった3タイプの女性たちをまとめるのは、家族を大切にする価値観とカザフスタンの伝統に対する敬意、そしてSNSとネットニュースの使用です。バスキンバイェヴァさんは、現代カザフスタン女性の国民性を守るため、カザフスタン女性の共通点をもっと発見したいと願っています。