2021年8月24日(火)、第29回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回は、筑波大学人文社会系教授の矢澤真人氏を講師にお招きし、「日本語デジタル辞書研究の最前線-ひとりひとりの能力とニーズに応える言語支援ツールへ-」と題する講演をしていただきました。

矢澤先生は、筑波大学人文学類、同大学院文芸・言語研究科の博士課程を修了され、1989年に本学に着任されて以来30年以上の長きにわたり、日本語学、教科教育学の分野で研究・教育をされてこられました。また、日本語文法研究に留まらず、『明鏡国語辞典』などの国語辞書編さんや教科書執筆等、言語教育分野でもご活躍されており、さらにはコンピュータにおける日本語変換システムの監修委員としての活動もあるなど、言語研究成果を社会実装化することに大きく貢献されてきました。今回のご講演では、IoT、AIデジタルを活用した社会変革を目指す動きが世界的に活発化する中で、日本語を学ぶ人々にとって日本語デジタル辞書がどのような存在となっているか、また今後の日本語デジタル辞書の発展について、最先端の研究成果をお話しいただきました。

コロナ禍の社会となり、教科書やワークなどもタブレットに格納するような構想が出されている現在、国語辞典とはもはや、ただ言語情報を羅列した「もの」であるだけでなく、利用者に不足している日本語の情報を提供するサービスの基となるものであり、読み書きだけでなく聞く・話すときなどにも利用者の助けになるサービスになるとのことです。電子辞書がこのようなサービスとして機能するためには、ワンストップサービス、個別対応、そして言語活動連動という三つの考え方が必要で、これらを社会実装化するためにどのような研究が必要か、また、どのような実験観察を行ったかという視点でお話が進んでいきました。小学生が電子辞書を使いながら文章を読むことで、学力レベルに関わらず、素早く目当ての単語の意味にたどりつくことができ、さらに様々な辞書間での意味の比較や、言語の範疇を飛び出して、文章が書かれた時代背景について調べる活動に発展するなど、豊富な現場での実例から電子辞書の行く先を想像させる、大変示唆に富んだ講演会となりました。

この講演会の模様は令和3年8月25日~令和3年9月5日までmanabaにて動画配信されました。