2021年9月16日(木)、第31回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回は、ジャーナリストの松田良孝氏を講師にお招きし、「多民族社会としての石垣島から考えるSDGs」と題する講演をしていただきました。松田先生は、1991年4月に十勝毎日新聞社に入社し、政経部記者を経て、1993年2月から沖縄県石垣島の八重山毎日新聞の編集部記者を務め、およそ20年あまりにわたって沖縄県の八重山諸島に密着した取材活動を続けてこられました。2004年には、南山舎より出版された著作『八重山の台湾人』で沖縄タイムス出版文化賞を受賞されています。現在はフリージャーナリストとして、台湾を拠点に活動されています。今回のご講演では、石垣島における台湾移民の暮らしぶりなど、貴重な写真を交えてお話しいただきました。
石垣島は台湾と非常に近い位置にあり、石垣から沖縄本島の那覇までが400kmあまりであるのに対し、石垣から台北までは230kmと、およそ半分ほどの距離になっています。こうした地理的な背景もあって、石垣島には昔から台湾からの移民が多く訪れ、その子孫が今も居住しています。また、石垣島周辺は、戦後になって沖縄本島や宮古島等から多数の移民を受け入れ、いくつもの開拓地が発展してきたという歴史もあり、字(あざ)ごとに異なる出自の人々が暮ら、それぞれの言葉、風習が存在するというきわめて状態を観察することができます。そのことから、沖縄では、市町村よりも小さな字、小字ごとに地域史が編纂されることが頻繁にあります。台湾移民コミュニティでも地域史を編む動きはありますが、移民としてやって来た人々には教育を受ける機会に恵まれなかった人が多く、歴史の継承は写真や新聞記事に負うところが大きいようです。
ご講演の後半では、台湾移民コミュニティで今まで受け継がれている土地公祭について、たくさんの写真を交えてお話ししていただきました。土地公祭とは、旧暦8月15日、台湾系の人々によって行われる祭りで、たくさんの豚を供えるという大変ユニークなお祭りで、豊作や無病息災を祈願します。
沖縄地方では今でも、島ごと、地域ごとに異なる言葉や文化などが息づいており、多様性を保持している地域です。今回のご講演は、小さなグループの中の自分たちの伝統的な文化を継承していくための今までの営みを知り、これから先それをどのように継承するかということ考えていくための良い機会となりました。