2021年9月10日(金)、第30回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回は、外務省 欧州局 中央アジア・コーカサス室 室長の武田善憲氏を講師にお招きし、「コロナ禍における日本の対中央アジア外交」と題する講演をしていただきました。

武田先生は、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程を中退後、外務省に入省され、その後、大臣官房課長補佐、中東アジア局首席事務官、国連日本政府代表部一等書記官、在イラン日本国大使館参事官、そして、大臣官房を経て現在、欧州局中央アジア・コーカサス室長に就任されており、日本の現役外交官の中でも特に優れた対中央アジア外交のエキスパートでいらっしゃいます。今回のご講演では、2022年に日本との外交関係設立30年を迎える中央アジア5か国について、最近の外交状況や「中央アジア+1」の様々な枠組み、さらに、緊迫した状況が続くアフガニスタンとのかかわり等も交えてお話しいただきました。

2004年から、「中央アジア五か国+日本」という枠組みで外相会合が行われており、日本は、中央アジアが安定し自立した発展を遂げられるよう、インフラ、農業、運輸といった分野を中心に取り組んでいます。筑波大学とは、その一端を担う人材育成の分野で協力関係にあります。日本とは別に、中央アジアはEU、韓国、インド、アメリカ、ロシア、中国の各国とも連携しています。中央アジアがこれらの国々に求めることはそれぞれ異なり、例えばロシアとはアフガニスタン情勢を見据えた安全保障について、中国とは天然ガス等の貿易について、EUとは人権、民主主義について、さらに韓国とは経済といった風に、同じ「中央アジア+1」でも、その様相はまったく異なります。

講演の最後には、アフガニスタンの急激な動きを受けて、中央アジア5か国はどのように対応したかについてもお話しいただきました。陸続きである隣国に対し、民族構成や国境の長さ、国家体制など、それぞれ違う特徴を持つ五か国姿勢が鮮明になり、地政学的に重要な土地である中央アジアにおける、多くの問題を見つめ直す良い契機となりました。

この講演会の模様は令和3年9月10日~令和3年9月26日までmanabaにて動画配信されました。