2022年2月4日(金)、第3回オンラインによるロシア・中央アジア映画上映会が開催されました。ロシア人監督フィリップ・ユーリエフがユーラシア大陸最東端のチュコトカの漁村を舞台に、7年をかけて撮り上げた長編第1作『キットボーイ』(2020)が上映されました。前2回の上映会に引き続き、今回も定員を超える500名を超える申し込みがありました。第1回から継続して参加していただいている方も少なくなく、本上映会もロシア・中央アジアや映画そのものに関心のある方の間で定着してきました。
今回も上映前に、NipCAプロジェクトのコーディネーターを務める梶山祐治UIAが「中央ユーラシア極地の映像から考える貧困・格差・国境問題」と題する事前解説を行いました。今回の解説では、上映作品『キットボーイ』中に登場する地図の画像を示しつつ、チュクチと言語・文化的に近いカムチャッカの紹介に始まり、アメリカ大陸との最短距離がわずか86キロに過ぎないチュコトカの位置関係、さらにその中心に位置し日付変更線に貫かれたロシア領とアメリカ領から成るダイオミード諸島など、映画作品を理解する上で欠かせない地理の特殊性についての説明に力点が置かれていました。チュコトカはツンドラの大地に厚く覆われ、陸の孤島となっています。このような土地における疎外感が、そこに住む人々にも大きな影響を与えていました。
ほとんどの参加者にとってチュコトカの映像は初めて見るもので、上映後のアンケートからは、厳しい自然環境は言うまでもなく、アメリカが目と鼻の先にありながら自由に渡航できず、日常的に発生する停電やインフラが未整備である様子にショックを受けたというコメントが多く見られました。また、本作が俳優デビューとなった主人公リョーシカ役のチュクチの俳優にはその演技やキャラクターを含めて好意的な評価が多く、彼が苦しみながらも英語を習得する様子は、コミカルな描写でありながらも語学学習の熱意に打たれた、という意見も見られました。
今回は、本ロシア・中央アジア映画上映会では初めてのロシア映画の上映となりました。ロシア映画といっても、今回の上映作品はチュコトカを舞台とし、ロシア語・チュクチ語作品だったように、その有様は実に多様です。映画を通してこうしたロシア・中央アジアの様々な世界を紹介し皆様に親しんでいただくため、今後も引き続き上映会を開催してまいります。どうぞご期待ください。