2022年3月4日(金)~3月5日(土)、タシケント国立東洋学大学と筑波大学人文社会系の主催による国際会議「文明のクロスロード14『比較類型論研究のプリズムを通して、異なる文化、民族性、言語の相互理解』」がZoomを用いたオンラインと現地参加型のハイブリット形式にて行われました。NipCAプロジェクトからは、実務責任者の臼山利信教授、副実務責任者の小野正樹教授、コーディネーターの梶山祐治UIA、SOIPOV Jasur研究員がオンラインで参加しました。

1日目の冒頭では、タシケント国立東洋学大学OMONOV Kudrat Sharipovich副学長、筑波大学永田恭介学長、駐日ウズベキスタン大使ABDURAKHMONOV Mukhsinkhuja閣下より祝辞が寄せられ、本国際会議に期待する役割やさらなる研究の発展の祈念等についてそれぞれお言葉を述べられました。

続く研究発表では、小野先生は人文社会ビジネス科学学術院 人文社会科学研究群(博士後期課程)国際日本研究学位プログラム1年生の日暮康晴さんとともに、「オンライン日本語初級会話データベース型教材『にほんごアベニュー』の開発」というテーマで発表を行いました。パンデミック禍において本来あった留学・交流の機会が制限されている中、新しい日本語教材として開発された「にほんごアベニュー」という言語学習プラットフォームについて紹介されました。スマートフォン・パソコンで利用でき、日本語・英語・ウズベク語に対応しています。現在データを蓄積している最中であり、さらに今後は例文投稿機能やクイズ機能を搭載予定で、2022年4月に第一段階として公開予定とのことです。

同じセクションでは、臼山先生が指導学生である人文・文化学群人文学類言語学4年生の小山正吾さんとともに、「現代ロシア語形容詞短語尾形のアクセントの類型について」というテーマで発表を行いました。冒頭、臼山先生より、本研究は小山さんの卒業論文のテーマであり、優れた内容であるため学会参加を決めたとのお話がありました。小山さんはロシア語の形容詞のアクセント類型について、先行研究2例において存在しないとされたある類型に当てはまる語の存否、また、先行研究で指摘されている類型の出現頻度は正しいのかどうか、露和辞典やコーパスを用いて調査し、その成果を発表しました。

2日目の研究発表では、SOIPOV研究員が、日本で学ぶウズベク人留学生の傾向を分析した、「Brief Picture of Uzbek Students in Japan from 1994 to 2019」と題する発表を行いました。ウズベキスタンではその他の中央アジア諸国と比較しても国内の大学進学率が低いため海外志向が強く、その傾向が年々強まっている様子が紹介されていました。ロシアやカザフスタン、韓国に比べれば日本のウズベク人留学生まだ少数ですが、それでもここ30年ほどで急激に増加した彼らの傾向が豊富なデータ分析によって紹介され、報告を聞くウズベク人の注目を集めた発表でした。

2日目、最後のセクションでは、梶山UIAが「映画史における日本と中央アジアの関係」と題する報告で、ソ連・中央アジア映画で日本人がどのように描かれてきたか、また日本の歌や日本製品の表象について整理し、近年の日本と中央アジアの共同製作映画についての分析を行いました。雪解け期の映画で観光客として登場した日本人は、その後、多くの日・ソ合作映画の時期を経て、日本軍人や中央アジア特有の日本人捕虜としてしばしば描かれました。近年の作品である黒沢清『旅のはじまり 世界の終わり』(2019)では、異国趣味とは異なる観点から観光立国ウズベキスタンの風景が描かれている点が両国の真の交流を成立させている、という指摘がされていました。

2日間にわたって開催された本学会は、様々な異なるテーマの発表を通して、文化、民族性、言語の相互理解が深まる内容となりました。日本人の参加者は全員がオンラインにて日本からの参加となりましたが、現地で報告したかったとの声が多く、新型コロナウィルスのワクチン接種が進む中で、来年の学会は現地で報告を行う参加者が増えることが期待されます。最後には、タシケント国立東洋学大学学長GULCHEKHRA Rikhsiyeva学長により、充実した発表を行った参加者への感謝と日本とウズベキスタンのより一層活発な交流への期待の言葉が述べられ、閉会となりました。