2021年3月7日(月)、第33回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催し、写真家の稲田喬晃氏を講師にお招きして、「旅するフォトグラファー 〜写真・映像表現とアカデミズムの融合が生み出す突破力〜」と題する講演をしていただきました。
稲田氏は、大学卒業後世界一周の旅に出て世界の様々な人物や風景を写真に撮ったことがきっかけとなり、帰国後、カメラマンとしての活動を始められました。現在は、人物撮影をメインとして活動される傍ら、ライフワークである世界中を旅して写真を撮り続ける活動も継続されています。また、当講演会シリーズで以前にもご講演をいただいた、京都大学白眉センターの相馬拓也先生のフィールドワークにカメラマンとして同行されるなど、アカデミアにおける研究成果を社会に発信することにも大きく貢献されています。かつてはNipCAフェローの研修にも同行されたことがあります。
ご講演では、中央ユーラシアに位置するモンゴルやネパールなどで稲田氏が撮影された、動物や人物の写真を中心に見せていただきました。モンゴルの馬やカザフ族イーグルハンターの狩りが成功した瞬間、伝統の生活を続ける人々の生き生きとした姿、そして雄大な自然と、見ているだけで旅に出ている気分になる、素晴らしい写真の数々に参加者は魅了されました。
講演の後半では、写真を撮ることの意味として「今を記録・記憶することは未来の人類への贈り物」であるというお話が印象的でした。時間の経過とともに消えていく人々の文化や自然などの貴重な「今」を残しておくことの大切さが説かれていました。さらに、「カメラはアカデミズムとアートを同化させるために不可欠なツールである」とのことで、言葉ではなく視覚的に研究成果を示すことで、あまり世に知られていないことでも人々にその内容が届けやすくなる、いわば「突破力」をもつことができるというお話を聴くことができました。講演後の質疑応答では、過酷な撮影環境における機材や心がけ、また、稲田氏ご自身に関することなど様々な質問が出され、過去の講演会と比較しても非常に多くの質問・コメントが飛び出した、聴講者皆が稲田氏の人柄に魅了された講演会となりました。