令和4年10月27日(木)、第5回 Special Lecture and Discussion “The Road to Digital Transformation to Change Society”を開催しました。今回は、筑波大学システム情報系社会工学域教授の谷口守先生を講師にお招きして、「多様化するスマートシティとその課題」と題する講演をしていただきました。
谷口先生は都市・地域計画、交通計画、環境計画などをご専門とされており、これらの専門を活かした多様な視点からまちづくりに関する研究をされています。
講演では、現在のまちづくりの目標として掲げられることも多い「スマートシティ」という新しい概念と、この言葉が持つ課題と問題についてお話しいただきました。
講演の冒頭では、「スマートシティ」については膨大な情報が発信されているにも関わらず、論文・文献を見ていくとそれらの定義はバラバラであり、まだこの言葉の持つ意味は定まっていないという現状をお話しいただきました。
アラブ首長国連邦(UAE)のマスダールシティは、エネルギー消費をすべて再生可能エネルギーまかない、二酸化炭素を一切排出しない都市として、世界最高の「スマートシティ」とも呼ばれています。しかし、実際は、人口5万人のこの街では二酸化炭素をほとんど排出しないことが実現できていても、同国の人口100万人以上を超えるドバイ、アブダビといった急激に都市発展した地域では膨大な二酸化炭素を排出し続けています。このように、「スマートシティ」と銘打っている都市でも、二酸化炭素削減という目的を根本的には果たせていない場合があることを、実例を交えてご講演いただきました。
また、IT化が進んだ結果、徒歩が主な移動手段であった時代、そして自動車が主な移動手段であった時代と比べ、情報取得のための障壁が簡単に乗り越えられるようになりました。
そのような中で、現在はMaas(Mobility as a Service)という、個人にとってベストな交通サービスの組み合わせの提供を目指す考えが広まっています。従来は個人が、それぞれの交通機関に別々で働きかけなければなりませんでしたが、それらを一括で可能にするインターネットサービスが提供されるようになってきています。このサービスの広がりから、移動の際の障壁はより低くなっていき、都市の利便性がより進みつつあることもお話しいただきました。
まちづくり、そして生活の中にITサービスはどんどん浸透していきます。コロナ禍を経たことも相まって、インターネットを介した通販や通話サービスなどの利便性を誰もが理解し、利用する時代となりました。しかしながら、このようなITサービスが浸透していくことで、小さなお店が潰れ、町が衰退するジレンマが存在することも紹介されていました。