2023年2月3日(金)、第5回オンラインによるロシア・中央アジア映画上映会が開催されました。第5回目となる今回は、ウズベキスタンの最新映画として数々の国際映画祭で上映され注目を浴びた、ヨルキン・トゥイチエフ監督の映画『ファリダの二千の歌』(2020)を上映しました。今回の上映作品は、日本とウズベキスタンの外交関係樹立30周年を記念して、筑波大学とウズベキスタン中高等教育省の共催で開催された「日本ウズベキスタン学術・文化フォーラム」において、昨年9月30日(金)にノバホール(茨城県つくば市)にて定員100名で日本初上映された作品です。昨年の上映時からオンライン上映を求める声が多く寄せられ、今回、より多くの方々に鑑賞していただけるよう、第5回オンライン上映会を開催することとなりました。

上映前には恒例となってる、NipCAプロジェクトのコーディネーターを務める梶山祐治UIAより、「現代ウズベキスタンの新しい映画の潮流」と題した事前解説がありました。ソ連時代から中央アジアの映画文化を牽引していたウズベキスタンは、独立後30年を経て新しい映画監督が育ち、同国独自の作品が続々と製作されています。残念ながら日本ではほとんど紹介される機会がありませんが、解説では新しい映画の潮流として、女性の生き方に焦点を当てた映画作品が複数紹介されていました。ロシア語圏で高く評価されたアユブ・シャホビッディノフ『天の女(ひと)』(2012)の他、日本でもいくつかの作品が紹介されているサオダト・イスマイロワの『40日間の沈黙』(2014)や『彼女の権利』(2020)など、中央アジア映画の中でも特にウズベキスタンにおいて女性を描いた秀作が数多く制作されていることがわかりました。特にイスマイロワの『彼女の5つの人生』(2020)は、1920年代から現在にいたるウズベキスタンの100年間における女性の生き方を5つに区分し、自作を含むウズベク映画の引用によってその変化を示した優れた短編作品となっていました。

今回の上映作品の監督を務めたトゥイチエフは1977年生まれで、特別に女性の生き方を主題とする作品を多く制作しているわけではありませんが、現代ウズベク映画の新しい旗手として活躍している監督です。『ファリダの二千の歌』は、ボリシェヴィキ政権が樹立して間もない1920年代初めのウズベキスタン西部を舞台としており、社会のソヴィエト化が進むなか、伝統的な一夫多妻によって睦まじく暮らしていた夫と複数の妻たちの暮らしが揺らぎ変化していく様を描いています。上映後のアンケートでは、映像の美しさに惹かれたという意見がかなり多かった一方、急展開を迎える後半に関しては多くの疑問点が出てさらに解説を求めるコメントも寄せられていました。こうした質問に関しては、次回の上映会後に刊行予定の報告書で、可能な限り取り上げてお答えしていく予定です。

NipCAプロジェクトでは今後も引き続き、中央アジアをはじめ、さまざまな地域の映画上映会を開催していきます。