ロシア語・カザフ語語学研修 研修報告書

国際総合学類2年 岡本みもり

1. カザフスタン共和国についての考察

i. 宗教について

私が最も印象的であった宗教について考察する。避けるべきことだったかもしれないが、カザフ国立大学の学生、ホストファミリーとそれぞれ宗教について少し話をする機会があった。カザフ国立大学の学生は私と同世代だった。彼女は日本のアニメに興味があり日本語を勉強していた。そのため、日本の文化や伝統にも理解があった。また、若者であるためか、多様性に寛容であった印象だった。日本の若い世代と感覚はとても近かった。日本の八百万の神という価値観については、素敵だと思うと考えを教えてくれた。他方、ホストファミリーは少し違っていた。私のホストファミリーは70代のおじいさんとおばあさんが2人だった。イスラム教を信仰しており、ラマダンや豚肉を食べないなどの教えを守って暮らしておられた。イスラム教を強要させられたわけでは決してないので、他の宗教の存在は認めていないわけではないと思う。ただ、他の宗教について知ろうとしないし、存在を認識しているようでもなかった。若者と高齢者の違いだと感じた。もちろん人によって信仰の度合いにも差があるが、若者は私と感覚が似ていたし、ホストファミリーの感覚は私にはあまり理解できなかった。旧ソ連地域や発展途上の中央アジアというイメージだったが、若者たちの世界と繋がる感覚や多様性の尊重という点においては、日本の若者と何ら変わらないと感じた。若者と高齢者の感覚の違いがあるというのも興味深い発見であった。目の前の人の人柄を忘れてカザフ人というステレオタイプにとらわれてしまいがちだが、カザフ人の中でももちろん多様性があって色々な人がいる。若者と高齢者の間でもかなりギャップがあり、その傾向を捉えることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ii. 中央アジアの外交について

現在の世界情勢において、中央アジア諸国は大変難しい立場におかれているように私には見える。ロシアがウクライナで戦争を起こしている限り、中央アジア諸国はロシアに賛成するのか、それともいわゆる西側の味方になるのかという2択に私はどうしてもこだわってしまう。しかし、中央アジア地域にとって大切なことはバランスなのだときづかされる。ロシア、中国、そして、そのほかの欧米諸国と適切な距離を保たなければならないことがカザフスタンの葛藤であり、同時に生き残っていくための術なのだと考える。誰かの味方でいることよりも、1つの国として存在し、各国とバランス良く外交していくという、そういう社会なのだと思った。一方日本はアメリカの味方で味方の敵は敵だというような考え方が日本社会に浸透していると感じた。日本とカザフスタンの外交姿勢の違いだと考えている。この外交の背景には、ロシアの全てを否定することなく、むしろソビエト連邦のおかげで今日の発展があるのだという考えがあると考える。私たちにとっては全てが悪に思えた支配は、言うまでもなく良い発展ももたらしたのだと、現地でそれを感じることができた。それゆえに、現在でもカザフスタンでは日常的にロシア語が使われており、ロシア系住民との共存も成り立っているのだと思う。そして、今後も適切な距離を保ちながら関わっていくことで、ロシアを含めた多くの国からより多くの技術や資本を得ることができる。これこそが中央アジア諸国のバランスを重視した外交である。日本や欧米で過ごしているだけでは気づくことができなかった視点であった。

2. 研修の成果

語学に関する成長

まず私の研修前のロシア語運用能力について整理する。挨拶とキリル文字を多少覚えたくらいだった。まず一番にぶつかった壁は筆記体だった。先生が黒板に板書していくが、まずそれがどの文字なのかそれさえわからなかった。参考書と黒板を行ったり来たりして、なんとか解読した。ただこれでは板書には間に合わず、何度も写し逃した。最初の方の授業はとにかく板書を筆記体で書き写す修行だった。次に大変だったことは、リスニング・スピーキングだった。先生の質問に答えられないどころか、授業のほとんど何を言っているかわからなかった。理解できたのは授業前後の挨拶くらいだったかもしれない。挨拶程度しか勉強していかなかったので、当然だとは思う。では次に、それから1ヶ月を経た成果についてである。筆記体は数日でマスターし、板書も追いつき始めた。そして、テキストを毎日必死で追った結果、キリル文字を見て発音できるようになった。かなりゆっくりだが、文章や単語を発音することができるようになった。そして、1ヶ月前、99%理解できなかった先生の話だが、先生の発する言葉の30%程度は理解できるようになったと感じている。授業内容に関しては、50%程度は理解していると思う。あまり大きな数字に思えないかもしれないが、私にとっては大きな成長である。私の担当の先生は本当にロシア語しか話さない方だったが、そのために初期の授業は全く理解できなかったが、ロシア語でロシア語を勉強する良い機会であった。もちろん自分で課題をする中で勉強したりもしたが、主にクラスにいた英語を話せる子に助けてもらったり、同じ筑波大生にわからない箇所を聞くことで勉強することができた。ロシア語でロシア語を勉強するメリットは、発音の習得ととにかくたくさんのロシア語に触れて頭よりも体にたたき込むことだった。その格が採用される理由など抽象的な事象は、やはりロシア語授業内で理解することは私には難しかった。ただ、日本人学生や東洋学部の学生に教えてもらったときに腑に落ちることが多く、面白いと思うことができた。そのため、日本に帰国してからも学習を続けていきたいと思うことができた。

 

 

 

 

 

 

3. その他興味深いと感じたこと

他民族都市アルマトイ

アルマトイは多民族都市だと聞いたが、実際に都市に暮らす中でそれを実感することができた。日本ももちろん見ることができたが、特に韓国の文化、中国の文化の影響が強いと感じることができた。日本料理や日本の商品を取り扱う店舗もあったが、はるかに韓国に関する店舗が多かった。在カザフ韓国人のための店というわけではなく、カザフ人の間でもそのような店や商品は人気であった。日本と韓国との文化伝播の違いについては、朝鮮からの移民など歴史が関係していると考えられるが、今後調べていきたいと考える。また、中国文化はそれ以上にカザフ人の生活に影響していると感じた。むしろカザフの文化に取り込まれている部分も大きかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. まとめ

研修を通して、多くのことを学び感じることができた。しかし、私自身元々ロシア語を勉強していたわけでもなく、中央アジアに関する知識が豊富なわけでもない。そのため、今回の研修はあくまできっかけだったと感じている。ロシア語を学ぶきっかけ、中央アジアの文化や伝統の背景を考えるきっかけ、中央アジアと日本の関係性について考えるきっかけとなった。

生活に関しては基本的に都会で家や店になんでも必要なものはそろうので心配しすぎる必要はないと思う。それよりも日本で少しでも言語を学んで行く方が、生活はより豊かになると思う。また様々な文化や施設に触れたいと願うなら、それについても事前に少し調べて計画的に訪問すると良いと思う。具体的な場所でなくても、現地の方に「~したい」というふうに伝えれば、方法を考えてくれるので、叶えたいことを考えておいた方がよいだろう。