2023年度年ロシア語・カザフ語短期語学研修リポート

富田

 今回この研修に参加した動機は、大きく分けて3つあります。

1つ目は、純粋に自分のロシア語能力を高める目的です。ロシア語を何年履修していてもロシア語に触れる時間が圧倒的に足りておらず、上達している感覚が感じられませんでした。そこで周りがすべてキリル文字で書かれた世界にどっぷり浸かりたいと、カザフスタンを選びました。

2つ目は、カザフスタンという「未知の」中央アジアの奥地に足を踏み入れてみたかったという理由です。日本では西洋やアメリカ、中国などの情報は簡単に手に入りますが、中央アジアに関してはマイナーな方だと感じます。情報が少ないからこそ、他国の留学に比べて学べることが多く刺激的な一か月を送れるのではないかと期待して、カザフスタンを留学先に選びました。

3つ目は日本のよさとは何か、海外の視点から相対的に見てみたかったという理由です。よく日本礼賛番組や世間一般の共通認識として「日本はいい国だ」という考え方、見方がありますが、海外とのどういった違いが日本に良い印象を与えているのか、はたまたその考えは日本人の一方的な偏見ではないのか気になって、視野を広げるべく留学を決めました。

漫画をはじめとするロシア語翻訳版の日本グッズ「日本のラーメンをうたう」レストランのラーメン

カザフスタン共和国留学を得ての率直な感想

全体的な印象として、カザフスタンはイスラム圏、アジア圏、ヨーロッパ圏の文化が融合した、悪い意味ではカオスな、いい意味では日常にエキゾチックさが漂う国だったと感じます。特にアルマトイという200万人規模の大きな都市にいたからそう感じるのかもしれません。人々はカザフ語とロシア語を交互に使い分けながら生活し、馬肉や羊肉を食べる遊牧民の食文化を残しながらも、一方でイスラム教の信仰も篤く家族と伝統を大切にしていました。このように多種多様な共存のあり様を見て、聞いて、嗅いで感じることが出来るのがカザフスタンの魅力だなと感じます。

アルマトイについて

アルマトイの道行く人々を見ると外見から身長まで様々な人々が住んでいました。博物館で聞いた話によると、民族構成はアジア人であるカザフ人が多数派でその次に多いのがロシア系、その後アジアの少数民族やヨーロッパ人などと続き、アメリカとは対照的な多民族性を感じました。まさに「アジア人種のるつぼ」と言ってもよいかもしれません。

地図上に民族構成の内訳、下部に各民族が記載

またアルマトイの人々の時間感覚にも驚かされました。バスでたまたま一緒になったカザフ人によると渋滞で会社に遅れるのは日常茶飯事なので、1時間、2時間遅れてもお咎めなしだそうです。友達との約束でも1時間くらい遅れることが多かったので、ある意味日本のように時間にキツキツしていなくて、羨ましくも感じました。

アルマトイの食文化にも衝撃を受けました。ロシアの食文化に加え、様々な肉を食べる遊牧民の食文化、香辛料を多く使ったシルクロード文化圏の食文化が混ざり合っていたのはとても珍しい光景に映りました。また日本の食文化が完全コピーの輸入物でなく、分からないなりにカザフスタン風にアレンジされている点がとても興味深かったです。韓国料理や中華料理は本場の味に近く、政治的、地理的な国通しのつながりを直に感じられました。

ラクダの肉中華レストランのラーメン

研修を終えて

今回最も成長したと感じるのは学習面です。新しい語彙に触れる機会が多く、ロシア語学習に取り組める時間が十分にあったので、確実にロシア語のレベルは上がったと実感しています。また現地でできた人間関係も貴重な財産になりました。ことばは片言でも、しっかりと互いの意思を理解し伝え合うことができました。日本にいるときよりも誰かと付き合って行動する機会が多く、今では日本人よりも親密な人間関係を築けたとさえ思っています。今回の研修は日常的に必ず新たな学びがある充実した一か月間だったと実感しています。