2024年1月26日(金)、第47回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」を開催しました。今回は、名城大学人間学部人間学科教授の岡戸浩子先生を講師にお招きし、「地方自治体における多文化共生施策と多言語対応-愛知県豊田市の取組の動向から考える-」と題する講演をしていただきました。

名古屋大学大学院国際開発研究科で博士号を取得された岡戸浩子先生は、ニュージーランドの、英語以外の外国語教育に関する研究や、日本社会の国際結婚における多言語化、アイデンティティといった観点の研究に取り組んでこられました。現在は、日本社会の多文化共生の観点から、地方公共団体の多言語対応についてのご研究を推進されています。今回の講演では、日本、そして愛知県、豊田市に焦点を当てた多文化化と多言語対応の様相をお話しいただきました。

現在、日本には約307万人の在留外国人が暮らしていて、中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ブラジルの順に多くなっています。一方、外国人住民の数が東京都に次いで全国で2番目に多い愛知県では、県の総人口の3.97%が外国人住民であり、ブラジル人が最も多い割合を占めています。

多言語対応を推進する豊田市では、市民相談のための多言語サービスデスクが開設され、窓口に英語、ポルトガル語、スペイン語の通訳職員がいるほか、その他の言語では遠隔の映像通訳サービスが提供されているとのことでした。また救急活動では、コミュニケーション支援ボードや、電話通訳センターを介して21言語の119番通報にも対応する「三者間同時通訳」、31言語に対応した音声翻訳アプリ「緊急VoiceTra」等のサービスの活用状況をご紹介いただきました。

質疑応答では、豊田市における施策の充実に至るまでのプロセスや、母語維持支援、母語で教育社会福祉を受ける権利に関する議論の進み具合についての質問が寄せられました。また、外国出身の専門家から、日本で定住するなら日本語を学ぶ必要があるというメッセージを積極的に発する必要があるという力のこもったご指摘も寄せられ、盛会となりました。