2021年2月5日(金)、第1回オンラインによるロシア・中央アジア映画上映会が開催されました。中央アジアの文化とSDGsへの理解を深めるため、日本で未紹介の映画に字幕をつけて紹介していく新たな企画の第一弾です。今回の上映は、事前の作品解説をZoomにて、その後、映画上映を高画質動画が視聴可能なVimeoにて行う形式を取りましたが、Zoomの定員500名を超える522名の申し込みがあったため、500名を超えてから申し込まれた方には定員制限のないVimeoへと直接ご案内し、作品のみを視聴していただくことになりました。本上映会は広報開始直後から非常に反響が大きく、NipCAプロジェクトでは過去最大のオンライン・イベントとなりました。
事前解説では、今回の企画の立案者であるNipCAプロジェクト・コーディネーターの梶山祐治UIAが「現代ロシア映画における中央アジア移民労働者の表象」と題する講演を行いました。前半は、現代ロシアの映像文化において、中央アジアからの移民たちがどの様に描かれているのか、日本でも上映されたセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ『アイカ』(2018)などを参照しつつ、同地域からの移民の増えた過去10年ほどの作品を取り上げて分析した報告でした。後半は、今回上映する作品の監督であるラリーサ・サディロワと映画『マヤ』(2013)について基本的な情報を紹介し、いくつかの場面における、タジク人移民労働者の環境や習慣についての解説がありました。例えば、映画の前半で、男たちが順番に、タジク人労働者のブローカー的存在であるラフマドにお金を渡して、ノートにその金額を書き込んでいる場面があります。これは、ラフマドを通して、タジキスタンにいる家族にお金を渡している場面で、ソ連崩壊して間もない1990年代には、タジキスタンへの銀行からの送金システムが存在せず、このように現金を手渡しで届ける業者が存在したことが指摘されていました。
上映後のアンケートからは、参加者がSDGs、ロシア・中央アジア、移民労働、女性労働、映画など、様々な動機から上映会に申し込んでいたことが分かりました。日本で中央アジア関連の映画を見られる機会は非常に少ないため、ほとんどの視聴者にとって、タジク語は初めて聞く言葉だったようです。ほとんどの視聴した方から映画は非常に好意的に受け止められ、最後の場面から、マヤの今後に希望を見出した方も多くいました。早くも第2回開催を希望する声が多く寄せられています。映画を大きなスクリーンで見られないのはやや残念ではありますが、申込者の中には地方在住の高校生や海外在住の方などもいらっしゃるなど、オンライン上映には多くの方に作品をお届けできるメリットもあります。
コロナ禍の中で様々なイベントのオンライン化が進みましたが、Zoomが映像を流すのには適していないこともあって、オンライン映画上映会は技術的にはまだまだこれからの印象です。上映後により詳しい解説を希望する声も多くありましたが、そのためにはオンライン上映会により適したフォーマットも必要です。今後はさらに多くの希望者が参加できる体制を整備しつつ、様々な上映形態を試みながら、上映会を継続していく予定です。