2021年2月22日(月)、第19回公開講演会シリーズ「中央ユーラシアと日本の未来」が開催されました。今回は筑波大学人文社会系准教授であるヴァンバーレン・ルート氏を講師にお招きし、「ベルギーの多文化共生と移民問題」と題する講演をしていただきました。

ベルギー出身のヴァンバーレン先生は、1991年の初めて来日されたのち、母国で大学を卒業され、1994年に筑波大学の研究生として再来日されました。その後、学位取得後は日本学術振興会外国人特別研究員等を経て、日本大学で英語教育に携わり、2016年より筑波大学で日本語教育に専念されています。今回は、ベルギーの移民政策についてお話していただきました。

ヨーロッパの中央に位置し、様々な国に支配されてきた背景を持つベルギーにはオランダ語・フランス語・ドイツ語という3つの公用語があり、それぞれが共同体政府を持つ連邦制度が敷かれています。そして、さらに約1世紀前から移民・難民として新しい人々が断続的に入ってくるようになり、ベルギーは多様な言語や文化を有する多文化共生社会となりました。このような社会では、移民がより深く社会に溶け込み、社会の一員として活躍できるよう対策が取られることがあります。もちろんベルギーも例外ではなく、公的機関や民間団体による様々な対策が取られています。オランダ語圏における公的機関である市民化局は、移民が社会の中で活躍できる市民となるための、社会科とレベルごとのオランダ語の授業を提供しています。対して、民間の事業では例えば「サッカーママ」という、子どもたちがスポーツの練習をしているときに母親たちがオランダ語を練習するというものなどがあります。これは、家族以外の男性との交流ができないムスリム女性たちの教育に一役買っています。公的サービスでは予算や人手など様々な理由で一元的なサービスしか提供できないこともありますが、このように公的サービスと民間事業を組み合わせると、支援が届きにくい層にもよりアプローチしやすくなるという好例であるように感じました。講演会後は活発な質疑応答の時間となり、まだまだ移民社会として未成熟な日本社会にとって、これからを考える大きなヒントに満ちた講演会となりました。

この講演会の模様は令和3年2月26日~令和3年3月7日までmanabaにて動画配信されました。