令和4年2月17日(木)、第4回 Special Lecture and Discussion “The Road to Digital Transformation to Change Society”を開催いたしました。今回は、一般財団法人 日本自動車研究所 自動走行研究部 研究員で筑波大学 教授(協働大学院)の安部 原也氏を講師にお招きし、「交通事故の防止,自動運転の導入に向けたヒューマンファクター研究」と題する講演をしていただき、その後参加者によるディスカッションを行いました。
認知システム工学をご専門とする安部先生は、一般財団法人 日本自動車研究所で、ドライバーの安全確保に向けた運転支援システムや自動運転システムに関するヒューマンファクターのご研究をされています。今回のご講演では、自動運転におけるヒューマンファクター研究についてお話をしていただきました。
近年、交通事故による死者数は減少していますが、その死者数のうち高齢者が占める割合は年々上がってきており、高齢者の交通事故を防止することが喫緊の課題のひとつとなっています。人間が自動車を運転する際の思考と行動には、認知(歩行者・車両に気づく)・判断(事故の危険性を判断する)・操作(ハンドルやブレーキを操作する)といったプロセスがあります。75歳以上の高齢者の事故を見ると、上記のうち、「操作」の不適が原因によるものが最も多いことがわかっています。事故を起こさないよう運転者を補助するために開発されているのが、運転支援システムです。ただし、人間が主として車を運転する以上、システムの研究だけでは不十分です。そのため、「操作やシステムを安全に、しかも有効に機能させるために必要とされている、人間の能力や限界、特性に関する実践的学問」である「ヒューマンファクター」を研究することが必要になります。人間はどのようにシステムを使うのか、様々な環境下でどのような振る舞いをするのか、といった人間の特徴を設計にフィードバックして、人と車と環境が三位一体となったところを研究しているとのことです。
ヒューマンファクター研究は、現在広く実用化されている運転支援システムの安全な運用のためだけではなく、人間が基本的に運転を行わない「自動運転」で運転者の安全性を確保する上でも必要となってきます。人間の意識・動作と機械のはたらきをシームレスに繋ぎ、安全な運転を実現するためには、さらに人間について深く知る必要があります。
講演後のディスカッションでは、自動運転が社会にもたらす恩恵や、自動運転が社会実装されることで可能になるサービスについての質問やコメントが多数寄せられました。
自動運転の技術的な面だけでなく、それによってもたらされる未来の生活様式について、参加者一人ひとりが考える契機となった講演会でした。
この講演会の模様は令和4年2月17日~令和4年2月27日までmanabaにて動画配信されます。