スヴァノヴァ・ユルドゥズホン

 

 

 

 ニセコ高校での高校生との交流の後、株式会社ニセコまちの村上さんと佐々木さんから、ニセコ町のSDGs未来都市づくりに関するプレゼンテーションを聞くことができました。ニセコ町は人口5,000人ほどの町で、日本では数少ない人口増加傾向にある地域です。人口が少ないにもかかわらず、年間約400万人(パンデミック前)の観光客が訪れ、地域のインフラに負担をかけ、住宅不足などの問題を引き起こしています。


 ㈱ニセコまちの取り組みは、経済・社会・環境の3つの柱からなり、町の人口増加や住宅不足に対して、エネルギー効率や防災対策などを考慮し、最も持続可能な形で対応することを目指しています。このプロジェクトには費用がかかるため、まだ必要な額には達していないものの、民間や公共の資金を多く集めることができれば、非常に現実的なものとなります。実際、この開発方針や環境を守るための独自の条例に共感した集団からの投資がすでに行われています。これによって企業の進出が進み、首都圏からさまざまな企業の本社が移転する動きも出てきています。また、地域金融機関も当初から調査に参加しており、将来的には複数の銀行が共同融資を行う予定だそうです。
このプロジェクトは、2020年に設立された官民や専門家が連携するまちづくり会社「株式会社ニセコまち」が、これまでの計画の過程で設立された地域SDGsの企画・実施も請け負って開発・発表するものです。


 ㈱ニセコまちが提案するプロジェクトの基本コンセプトは、山のすぐ隣にある美しい景観の地域に住宅と住環境を整備することで、子供が大都市に教育のために出て行き、また大きな家の維持や冬場の除雪が困難な高齢者層が移住に前向きになってもらおうという点にあります。そうすることで、町は住宅問題を解決することができます。つまり、このプロジェクトの目的は、単に住宅を販売するだけでなく、経済、社会、環境を含めた生活の質を向上させることなのです。
例えば、経済と環境のシナジーは、専門家による情報発信や意識改革、モデル事業の開発による様々なステークホルダーとの議論を通じて促進され、地域の建築業者が省エネ住宅や資源循環に取り組むインセンティブをさらに高めていることが見て取れます。


 このプロジェクトは、ニセコでの新しい生活やコミュニティのあり方を提示しているため、経済と社会とのつながりはより明確になっています。事業展開には、地域住民や移住希望者とのライフスタイルに関する対話の促進が不可欠です。この対話を通じて、ニセコの価値を高め、ニセコに住みたい人を集め、住み続けられる環境を維持し、さらに住宅開発による地域経済と人口増加を確保し、そして、人口が増加し、安心して住み続けられる新しいコミュニティが形成されることにより、地域経済を担う人材の長期安定的な確保・育成につながり、それが事業展開の基盤ともなります。


 ニセコはすでに持続可能な町であり、住民も環境に配慮しています。社会と環境の柱の相乗効果により、低炭素化(ニセコも2050年までにCO2排出量を86%削減する計画)と持続的発展の両立を目指すエコモデルシティとしての取り組みが推進されています。また、省エネ住宅の開発により、エネルギーコストの削減が可処分所得の増加につながるため、生活の質や住環境の向上が期待されます。その結果、地域への愛着が生まれ、活発な地域活動やコミュニティの維持・発展につながっていきます。

 このプロジェクトで非常に重要なのは、どの段階でも町民との情報共有とプロジェクトへの参加を優先し、そのために議論に参加し意見を述べられる専用のイントラネットを開発し、地域住民の自治意識を維持、さらには向上させ、不安を払拭している点です。このプロジェクトが、ニセコ町のような民間企業によって策定され、運営されていることは、住民の自治意識をより高い効率で維持することにつながるので、私自身はとても素晴らしいことだと思っています。