2024年8月8日(木)、第49回「中央ユーラシアと日本の未来」公開講演会を開催し、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)本部(フランス・パリ)教育局若年・識字・能力開発課職員、片山弘倫氏をお招きして、「中央アジア・コーカサス地域における能力開発と職業訓練」と題する講演をしていただきました。

片山氏は国際協力事業団(JICA)に入団され、ユネスコ教育局派遣なども経験されました。退職後は世界銀行、OECDなどの国際機関の教育分野の調査研究などでご活躍されました。現職では、いろいろな国での技術教育と職業訓練、雇用のための能力開発などの支援および調査研究に従事されています。

講演ではユネスコの技術教育、職業訓練(TVET)の活動内容、また片山氏が過去数数か月にわたり直接関わったアルメニアの現状、そして課題にどのように対応しているかなど話していただきました。

ユネスコの活動の優先戦略には「学び、働き、生きるための個人の能力開発」、「包括的で持続可能な経済のための技能開発」などがあります。活動の多いアフリカの成功事例がコーカサス地域で役に立つわけではないため、OECDから学んだ教訓などをふまえて対応する必要があるとのことでした。

アルメニアはナゴルノ・カラバフをめぐるアゼルバイジャンとの紛争など地政学的に非常に難しい状況に置かれています。特に10万人に膨らんだナゴルノ・カラバフからの難民については、難しい対応を迫られています。一つの例は、首都エレバンには仕事の機会がありますが住宅が高く住むことができません。地方の町では住宅費は安いですが、仕事がありません。このような状況下でもユネスコは彼らに必要なスキルを身につけてもらい、仕事を見つけられるように支援することが大事であるとのことでした。

国により多種多様な要件があり、さらに地政学的に複雑な要因も加わった中での技術教育、職業訓練などの難しさを痛感させられました。また、ユネスコの活動についてもお話をお聞きできて理解を深めることができました。