2022年6月13日(月)、第34回「中央ユーラシアと日本の未来」公開講演会を開催し、株式会社国際開発センター 経済開発部次長、主任研究員の榊原洋司氏を講師にお招きして、「観光セクターから見た中央アジア」と題する講演をしていただきました。
榊原氏は、神戸大学大学院国際協力研究科を修了後、コンサルティング勤務を経て、現在は株式会社国際開発センターにてご活躍中で、これまで30カ国ほどの国で事業に関わってこられました。今回のご講演は中央アジアでの現地調査から戻られたばかりという中で、中央アジア各国の事情やGDPの変化といった経済指数、観光地や観光施策の具体例等を提示していただきながら、中央アジア地域の観光セクターについての概況をお聞きすることができました。
最初に詳しくご紹介いただいたウズベキスタンでは、2018年から多くの国で観光ビザが不要となり、
その結果観光客が増加しました。その一方でホテルや高速鉄道の空きが確保できず、その対応が課題となっているとのことです。また、サマルカンドに位置する観光省管轄のシルクロード国際観光大学では先進的なカリキュラムが導入されており、国を挙げた観光人材育成を図っていることが紹介されました。
次にご紹介されたキルギスは自然資源が豊富で、ウズベキスタンで歴史資源を、キルギスでは自然資源を楽しむというコースが一般的な観光ルートとなっています。キルギスを代表する観光名所であるイシククル湖は、旧ソ連時代からのサナトリウムとして知られています。湖は北方を山に囲まれ、古いサナトリウムを民間が買い取ってコワーキングリゾートを作る等、コロナ禍において新しい開発も行われています。南岸では乗馬体験、温泉などが楽しめる様子が紹介されていました。また、首都ビシュケクは近年開発された周辺国の首都と比較すると「古い街」「歩ける街」であり、旧ソ連時代からの街並みを楽しむことができる地域であるとのお話でした。
榊原氏が本年より携わっているJICAの事業「キルギス国チュイ州世界遺産を活用した地域開発・観光促進プロジェクト」においては、歴史資源活用がプロジェクトの中心に据えられています。日本の大学が発掘に携わっているアクベシム遺跡や、以前より観光地として人気のあるブラナの塔、旧ソ連時代に涅槃仏が発掘されたクラースナヤ・レーチカ遺跡、以上3つの世界遺産を活用していきたいとのことでした。
講演後には中央アジアの観光開発の可能性や中央アジア地域に対する心理的距離の問題、観光人材育成について等、同地域の観光について多岐にわたる質問が寄せられました。終了予定時刻を過ぎてもたくさんの質問やコメントが止まない活発な質疑応答となり、榊原氏の中央アジア地域観光に関する知見を垣間見ることのできる貴重な機会となりました。