研修報告書

人文・文化学群人文学類4年 池添里彩

1. 研修参加の動機

私は2023年3月から2024年3月までの一年間カザフ国立大学の準備学部に留学しており、9月から翌年の3月まではカザフ語のクラスで学んでいたが、帰国してからは、もう少し現地でカザフ語を学びたいという思いが強かった。大学卒業後は、これまで学んできたロシア語とカザフ語を活かし、日本とカザフスタン間の国際関係に貢献する仕事に就くのが夢である。今回参加した「海外語学研修カザフ語」は、カザフ人の家庭にホームステイをしながら約1ヶ月間カザフ語の授業を受けることができるというのが非常に魅力的であった。研修を通して、間違いなくカザフ語の運用能力を大きく伸ばすことができると考えたのが研修に参加した動機である。

 

2. 研修の様子

平日は毎日10時から13時まで授業があり、昼ご飯は外食をして、午後は現地の友達や知り合いと会ったり、留学生仲間と観光したりと自由に過ごすことができた。授業は、最初の2週間は韓国外国語大学からの留学生たちと一緒に文法と会話中心の授業を受け、最後の2週間は先生と1対1で様々な子ども向けの短いカザフ文学を読んだ。前半の2週間は主に会話力を高めることができ、後半の2週間は読解力や語彙力を高めることができたのが良かったと思う。特に読解の授業では、物語を読むだけでなく、読んだ物語の内容を口頭で要約する練習をしたり、日本の似たような物語の内容を紹介したり、非常に効果的な授業であった。また、9月に入ってからは2日ほど英語でのCiC特別科目の集中講義があった。1日目に国際関係の講義が3時間と、2日目に地理の講義が3時間の合計6時間という構成である。国際関係の講義では、移民にはどんなケースがあるかということや、移民することのメリット、デメリットについて2時間講義があり、最後の1時間は出された課題に沿ってミニポスターを作成し、先生に口頭で説明するということを行った。地理の講義では、カザフスタンの気候変動と中小都市の都市計画についての短い講義がそれぞれあり、講義の他にも測定する器械が置いてあるラボなどを見学する時間もあった。授業以外での研修の目玉といえば、チャルンキャニオンとタンバリタス遺跡へのフィールドトリップである。チャルンキャニオンはアメリカのグランドキャニオンに次ぐ大きなキャニオンであり、カザフスタンの自然の雄大さと美しさを大いに感じることができた。タンバリタスは紀元前の岩絵が残る遺跡であるが、現地の日本語学科で日本語を学んでいる学生さんと協力して、ガイドさんの説明のカザフ語から日本語への通訳に挑戦できたのが非常に良い経験となった。滞在中はカザフ人の家庭にホームステイをしていたが、ホームステイもカザフ語での会話能力の向上に大いに役立ったこと間違いなしである。ホストファミリーとは毎日のように沢山カザフ語で話し、実家のある村に連れて行ってもらったり、ママ友の家での夕食会に連れて行ってもらったりと、本当に良くしてもらった。毎日のご飯も本当に美味しく、ホストマザーのアリヤさんをはじめ、素敵なホストファミリーに出会えたことに心から感謝している。アリヤさんは報告書の中でこの先も多く登場するが、カザフスタンでは女性の下の名前の後ろに「アパイ」という言葉を付けて呼ぶことが多く、現地ではアリヤアパイと呼んでいたため、以下アリヤアパイと記載したい。

ヌルシャット先生との授業の様子。普段は読解の授業ですが、この日は日本語学科の学生さんを何人か呼び、1時間はカザフ語の会話クラブを行いました。
地理学部のアイジャン先生との記念写真。学部の紹介や研究室の見学もあり、とても充実した集中講義でした。アイジャン先生は明るく上品で優しい方でした!
国際関係学部のライラ先生との記念写真。国際関係が専門でない私たちにも分かるように、様々な国際機関の説明や国際事情の説明も丁寧にして下さいました!
大好きすぎるホストマザーのアリヤアパイとご両親と村のご実家で撮った写真。カザフスタンの村に泊まりに行くのは初めてで、都会とは違ったのどかな雰囲気と綺麗な空気が最高でした!1年留学の時には経験できなかった貴重な体験でした。

3. 研修前後で成長した点

研修前後で最も成長した点は、なんと言ってもカザフ語の運用能力である。1年留学を終え、日本に戻ってからもカザフ人の友達とマメに連絡を取り、絶えずカザフ語は使い続けていたが、留学中に比べると、運用能力が衰えてしまったという感覚があった。カザフ語をかなり忘れてしまっているのではないか、という不安のあるまま渡航したが、現地に着くと、不思議とカザフ語で話す感覚を思い出していた。カザフスタンに到着してからは毎日のように家でも外でもカザフ語を使う生活で、日常の中で新たな表現を吸収することが非常に多かった。再びカザフスタンに来て、カザフ語を思い出す以上に、カザフ語の運用能力が以前よりも更に上がったように感じる。その成果もあり、滞在中に国営テレビからカザフ語が話せる日本人の女の子としてインタビューを受け、9月5日の「カザフスタン民族言語の日」に合わせて放送された。カザフスタンのメディアからインタビューを受けるというのも前回の1年留学の際には経験しなかったことであり、今回の研修の非常に印象深い思い出となった。インタビュアーの方にもカザフ語を習っていたのは7ヶ月、学び始めてからは1年であることを伝えると驚いており、短期間で流暢に話せるようになった努力を褒めて下さった。カザフスタンが大好きな私にとって、カザフ語を大事にし、学び続けていることで多くのカザフ人から感謝してもらえるのは本当に幸せなことであり、今回の研修を通して、今後もカザフ語の勉強を頑張り続けたいという大きなモチベーションとなった。

インタビューの様子。カザフ国立大学の本キャンパスで撮影しました。放送内容はこちらから確認することができます。 https://www.youtube.com/watch?v=DIsE7LpHSag 

4. 研修先についての考察

カザフスタンにはつい今年の3月まで一年間留学をしていたため、未知の国への研修というわけではなかったが、それでもカザフスタンやカザフ人の考え方、精神などについて新たに感じることも多かった。滞在中はホームステイをしていたことや、お客に行く機会が多かったこともあり、研修を通して私が特に感じたのは、カザフ人のお客を大切にする考え方である。まず、カザフスタンにはお客さんは神様が送ったものだという考え方がある。実際に、ホームステイ先では毎日のように美味しいカザフの家庭料理を沢山振る舞ってもらった。食事の際に手が止まっているとアリヤアパイが「これも食べてね、あれも食べてね」と笑顔で勧めてきて、私が「大丈夫、ちゃんと食べてるよ。」と返して二人で顔を見合わせてよく笑ったことは、アリヤアパイとの懐かしい思い出である。あるとき私がアリヤアパイに「毎日美味しいご飯を満腹になるまで食べてるからぽっちゃりしてきた」と言うと、アリヤアパイが「それは良いことよ!お客様を痩せて帰らせてしまったなんていったら大変」と言っており、カザフ人のお客を大切にする考えを強く感じた。また、アリヤアパイの実家の村に行った際には、コールダックを、ママ友の家に行った際にはベシュバルマクをご馳走してもらったが、お客である私、もしくは私とアリヤアパイのために作ったとはっきりと口に出して言っていたのが非常に印象的であった。カザフ人を表す性格としてよくқонақжай(読み方は「コナクジャイ」カザフ語で「お客好き」という意味)という言葉が用いられるが、カザフ人のお客さんを大切にする精神を様々な場面で体感する研修となった。

アリヤアパイのご実家で食べたコールダック。ジャガイモと羊肉を使うカザフの伝統料理です。アリヤアパイとアリヤアパイのお母様が作って下さいました!本当に美味しかったです!
アリヤアパイのママ友のお宅で食べたベシュバルマク。馬肉とジャガイモと麺で作るカザフの伝統料理で、写真のような木でできた大きなお皿に盛り付けることが多いです。

5. 研修の成果

カザフスタンへの留学は今回が2回目であったが、前回の1年留学では体験できなかった多くのことを経験し、非常に充実した留学となった。例えば、授業に関しては、カザフ語の授業だけでなく、英語でのCiC特別科目もあり、国際関係や地理の分野においてカザフスタンの視点から学ぶことができたのが良かったと思う。そして、研修に参加した一番の目的であるカザフ語の運用能力を伸ばすことに関しては、ホームステイが本当に効果的であった。ホストマザーのアリヤアパイとは毎日のように沢山話し、日常会話に関しては理解や返答に困ることがほとんどなく、かなり上達したという実感がある。アリヤアパイは朝から晩まで働いていたが、忙しくお疲れの中でも美味しいご飯を作って多くの時間を一緒に過ごして下さり、本当に心から感謝したい。アリヤアパイも私もカザフスタンの音楽やアーティストが好きという共通点があり、晩ご飯の際には一緒にYouTubeで音楽鑑賞をすることもあった。ホームステイ中は毎日が本当にカザフ語漬けの日々であり、やはり言語を習得するのであれば、ホームステイは効果的であると思う。帰国の数日前にはカザフ語が話せる日本人として、テレビ局からのインタビューを受けたことは本当に光栄なことであり、カザフ語が流暢に話せることを褒めていただいた際には、今回の研修で培ったカザフ語の学習成果を大いに感じた。

そして、今回の研修で何より嬉しかったのは、前回の1年留学で出会った先生方や友達と5ヶ月ぶりに再び会えたこと、また、今回の研修でも新しい友達や大切な人ができたことである。去年初めてカザフスタンに留学した際には、知り合いも友達もおらず、人間関係は全くのゼロからのスタートであった。それが今となっては、アルマトイが多くの大切な友達や先生、知り合いのいる第二の故郷と思える場所になっていることは、本当にありがたく、幸せなことであると思う。カザフスタンで出会った大切な友達や先生、知り合いとこうして親しい関係を構築し続けられているのも研修の成果の一つであり、留学をして得られるものは学問だけではないと改めて感じる部分である。今回の研修プログラムを通して得た経験や学び、人との繋がりは本当にかけがえのないものであり、素敵な研修に参加できたことに心から感謝したい。

カザフ国立大学日本語学科のグルミラ先生とのツーショット。グルミラ先生とは1年留学の時から知り合っており、今回再び会えたことが本当に嬉しかったです!
今回の留学で一番お世話になったホストマザーのアリヤアパイ。家は本当に居心地が良く、楽しくて幸せな毎日でした!最終日の前日の夜にはこれまでの感謝の気持ちを込めてお花とお手紙を渡しました。

番外編 ~私の幸せな帰郷~

ここでは、広報用に番外編として、いくつかのテーマに沿って今回のカザフ語研修について振り返りたい。2024年3月に1年間のカザフ留学を終え、今回はアルマトイの地への2度目の留学であった。カザフスタンのアルマトイを故郷のように考えている私にとっては、まさに実家への里帰りのような留学であり、それ故にサブタイトルを「私の幸せな帰郷」としている。

 

1. 研修の忘れられない思い出ランキング

今回のカザフ語研修は、本当に充実した楽しいものであった。ここでは、研修の中でも特に忘れられない思い出をランキングにして3つ紹介したい。

第1位 村での初めての宿泊

第2位 ホームステイ宅での巻き寿司パーティー

3位 インターナショナルなカラオケ

まず、第3位の「インターナショナルなカラオケ」とは、1年留学の時から仲の良いカザフ人の友達のアヤウルムと、アヤウルムの友達のセルゲイ、シンディーと一緒に4人でカラオケに行った時のことである。シンディーはベルギー人で、セルゲイはカザフ人だが先祖がロシア系やヨーロッパ系であり、カラオケをしながらそれぞれの国民性や価値観についても深く語り合うことのできた楽しい夜であった。留学を通して様々な民族のバックグラウンドを持つ友達ができるというのは、本当に素敵なことである。

次に、第2位の「ホームステイ宅での巻き寿司パーティー」とは、滞在中の最後の日曜日に私のドンブラの先生であり、最愛のお姉様でもあるグリダナも呼んでホームステイ先で巻き寿司を振る舞った時のことである。ホームステイのご家族にとっては、初めての巻き寿司であったそうだが、美味しいと言って気に入ってもらえたので良かった。食後はアリヤアパイが買ってきてくれたケーキや果物を食べながらグリダナと3人で女子会をし、最後にはグリダナと2人でドンブラの演奏も披露できて、忘れられない楽しい一日となった。

最後に、第1位は「村での初めての宿泊」である。これは、アリヤアパイのご実家を訪問した時のことであるが、本編の方にも書いた通り、1年留学の時には経験できなかったことである。カザフスタンの村を訪れてみることも夢の一つであったため、忘れられない貴重な思い出となった。アリヤアパイのご両親やご兄弟も本当に優しくてフレンドリーな方々で、一緒に過ごせた2日間は本当に楽しかった。またカザフスタンに行った際に、ご両親やご兄弟にお会いできたら幸いである。

 

2. アリヤアパイの美味しかった料理5選

ホームステイ中に幸せだったことと言えば、毎日のようにご飯が美味しかったことである。アリヤアパイは本当に料理が上手で、料理のバリエーションも多く、心の中では「天才シェフアリヤ様」と勝手に呼んでいた。ここからはアリヤアパイが作ってくれた料理で特に美味しかったものを5つ取り上げ、短いコメントと共に紹介したい。

1品目 「ドネル」

まず朝ごはんにドネルというのが驚きでした。その日は2度寝をしてしまってアリヤアパイに起こされ、寝ぼけながら食卓に着いたのですが、ドネルが美味しすぎて目が覚めました!アリヤアパイのドネルを一度食べたらもうお店のドネルが食べられなくなるほど絶品です!

 2品目 「マンティ」

マンティは餃子に似たカザフの家庭料理で、皮から手作りでした!中には羊の肉とジャガイモが入っています。できたてのマンティは肉汁たっぷりで、本当に美味しかったです!皮を伸ばして切ったり、具材を包んだりする際のアリヤアパイの手際が良く、まさに天才シェフアリヤ様でした。

左が蒸される前のマンティ、右が蒸し器の中の出来上がったマンティです!

3品目 「ブリヌィ」

ブリヌィとは、いわゆるクレープの皮で、ロシアをはじめとした旧ソ連圏では朝ごはんに出されることが多いそうです。スメタナという乳製品のクリームや、ジャムなどにつけて食べるのですが、アリヤアパイが作ってくれたボソボソとした食感のクリームチーズを中に包んだブリヌィは格別に美味しかったです!

 4品目 「お肉たっぷりそうめん」

正式な料理名は分からないのですが、茹でたそうめんに挽肉をたっぷりかけた料理です。日本でも夏といえばそうめんですが、お肉もたっぷり入っているので夏バテ対策になりそうです!

5品目 「ボルシチ」

ボルシチはお店や作る人によってかなり違いの出る料理ですが、アリヤアパイの作るボルシチはビーツたっぷりで味も濃すぎず、本当に美味しかったです!ボルシチだけでもお腹いっぱいになるほどで、野菜もお肉も入っている栄養満点の一品です!

 

3. 私が考える研修の魅力

最後に、研修の魅力を伝えたい。本研修の魅力は、カザフ語の授業、英語でのCiC特別科目、フィールドトリップ、ホームステイなどを通して、約1ヶ月間で多様な視点からカザフスタンについて理解を深められることである。日本に住んでいると、カザフスタンについて見聞きすることが少ないが、多くの人にとってあまり馴染みのない国であるからこそ、是非一度訪れてみてほしいと思う。また、研修ではカザフ国立大学東洋学部日本語学科の学生さんと関わる機会も多く、友達作りにも最適である。そして、研修先のアルマトイの気候に関して述べると、8月中旬は気温が上がっても30度ほどで朝晩は涼しく、8月下旬にはだんだんと涼しくなり始め、9月にはもう完全に秋の気候である。カザフスタンは日本に比べて乾燥しているため、気温が高くても蒸し暑いということがなく、研修中は本当に過ごしやすかった。日本の最も暑い8月中旬から9月にかけての期間を快適に過ごすことができるという点も、研修の良さの一つとしてアピールしたい。研修を通して、きっと今までは想像もしていなかった新しい世界が広がるはずであり、是非この体験記が研修への参加を考える後押しとなれば幸いである。

「コクトベ」という丘の上の観光地に行く途中に撮った写真です。ここからはアルマトイの町が一望できます!アルマトイは町中に自然が多く、南に山脈も広がっていて、景色が本当に綺麗です。