研修報告

理工学群数学類2年 大河内悠斗

1. 研修参加の動機

私はソ連の数学者の著書・論文を原著で読みたいと考えており、ロシア語学習の一環として本研修に参加した。具体的にはコルモゴロフやアレクサンドロフ、ポントリャーギンを読みたいと考えている。コルモゴロフは現代確率論の創始者とみなされているので、彼の著書を読むことは現代数学を学ぶ上で大変重要なものである。アレクサンドロフは位相幾何学の研究で有名であり、位相幾何学は結び目理論やタンパク質の立体構造の解析で重宝されているのでこれもまた学びたいと考えている。ポントリャーギンに関して、彼は常微分方程式の基礎的な教科書を著しているが、その日本語訳を読んでも腑に落ちなかったのでロシア語で再挑戦したいと思っている。上述したようにソ連時代の数学者の業績に触れるためにロシア語を学びたいと考え本研修に参加した。

 

2. カザフスタン共和国についての考察

カザフスタン共和国は言わずと知れたムスリム国家であるが実態としては世俗化していると言われる、それをイスラム教で禁忌とされている飲酒を例として考察する。ムスリムと交わした飲酒に関する話、実際に現地で飲んだアルコール類(ビールが多め)の順で考える。

① お酒に関するエピソード

私は3月20日にラマダン明けのムスリムたちと机を囲んで食事をする機会を得た、私が日本人だと伝えると「サケは飲むのか?」と尋ねられて、飲酒に関する話題になった。私は二人のムスリムと話をした、二人とも20代であった。普段飲むアルコールはてテキーラとワインであり、リンゴのサイダーもよく飲むと言い、中国に行った際はココナッツヴォッカを飲んだとも言っていた。周りには年配の大人たちもおり、何よりラマダン明けだったのでお祈りを行い、最高齢の男性のイスラム教に関する話題を聞いた後であったが、特に非難するようなこともなく笑って聞いていた。

また、前日にムスリムとビールを飲むことがあったが「ビールはええのかて ぇ?ボクはムスリムやけど飲むヨ」とコテコテの関西弁で返された。しかしながら、飲酒に関する保守的というかムスリムへの配慮を促す発言も上に言った人とは別の人から聞いかことがある。その彼とレストランで食事をして(私は当然ビールを飲んで)帰ろうとすると「ホームステイだよね、ムスリムの中には酒気も気にする人がいるから、少し経ってから帰った方がいい」と助言をいただいた。これから解ることとして、世俗化しつつも気に掛ける人もいると予想できると思う。但し、ムスリムと言っても人によって千差万別であるし、これからだではよくわからない、あくまで稚拙な予想の範疇である。

② 実際に飲んだお酒たち

ⅰ. ALMA-ATA

これは名前通りカザフスタンで作られたビールである。飲みやすい、炭酸が程よく強い、日本のビールで言うと黒ラベルに近い。但し、泡の感じはこちらの方が荒く力強さがある。

ⅱ. HOLSTEN

ドイツからの輸入ビール、マグナムというスーパーマーケットにたくさん置いてある。さすがドイツ製だけあって、ホップの香りが強く飲み応えがあ る。重いビールが苦手なら、Light 版があるのでそちらを飲んでもいいかもしれない。

ⅲ. Kozel

チェコ産の黒ビールである。あまり口に合わなかった、知り合いのカザフ人も好みでないと言っていた。香りや味を出すために糖類を加えているのが原因なのではないかと思う。但しヴェルヘイブンの黒ビールと似ているのでヴェルヘイブンが好きな人は相性がいいかもしれない。

ⅳ. Wild Kazakh Cider

カザフスタンで作られたヤーブラカ味のサイダーである。サイダーと言いつつアルコール度数は 5.7%とちょっぴり高めである。ヤーブラカの香りがよくパッケージもオシャレなので、カザフスタンに訪れた際は飲む価値があると思う。

以上の例から解ることとして、ムスリムの多い国と言っても自国産のビールがあり、他国からも輸入していることが解る。

 

3. 研修による自己変化

この報告書は研修中に書かれている、帰国もしていないし自己の変化を確認するためには時間が足りないのではないかと思うが、現時点で心当たりのあることをいくつか書こうと思う。

現時点で特に変化したと思うのは想定外に対する耐性がついたことである。本研修では予定表が知らされたが、たびたび変更・延期・中止などが起こるなどしてとても予定が書かれたものとは思えなかった。また、ホームステイ先から大学まで 10km 近くあるのでバスで移動していたのだが、朝のアルマトイ市内は渋滞がひどく、バスの運転手によってはルートを変更する、バス停で止まらない・ドアを開けないなどが多発したので大学に行くのも一苦労であった。しかしながら、通学以外のちょっとした移動にもバズを利用してみると、3週間目の途中から慣れ始めたのだと思うが、通学時も特に思うこともなく平常心で利用できるようになった。また予定表の予定が予定をさし示していない時も、そんな日もあると思えるようになり、数学の自習やロシア語の復習・友人とのアルマティ観光など柔軟に過ごすことができるようになった。カザフでは「神が望めば」という表現があるらしく、まさしく計画・スケジュールのない神に委ねられた生活を送った、最後には楽しめるようになった。

自分でもよくやったと思うのは、図書館で ID カードを作成したときと、バスで無賃乗車を責められたときである。図書館で ID カードを作成する際、パスポートや留学している大学の情報などを全てロシア語でやりとりしなければならなかった。当然、ロシア語でそんな芸当はできないので、うまいこと住所や大学名・学部名を見繕ってなんとかカードを作成することができた。

バスで無賃乗車を責められた際、そもそもカザフのバスではカードをバス内の機器に接触させる、コードをスマホで読み込む、現金で支払う、この3つの方法で乗車することが多い、但しお釣りがないことが多いので最初の2つのどれかで乗ることが多い、ただコードを読み込むためには専用のアプリが必要なのだがそのアプリを入れるのに住民登録が必要で、これもまたできないのでホストファミリーから頂いたカードを接触させて利用していた。ただ混んでいると、読み込ませていなかったり、接触させない人が現れるので、途中のバス停で支払ったかどうかを確認する職員の方が乗車する。私はその日、カードのお金がチャージ不足で、確認を行う職員の女性からカザフ語(?)で怒鳴られた。しかしこの時も冷静にコインを確認し「20、20、10、5、 5….ノルマリナ!」という具合で乗り切ることができた。