筑波大学 社会工学類
峯岸 美礼
私は今年9月、大学のプログラムでキルギスに2週間滞在した。滞在中キルギス共和国日本人材開発センターやJICA、国連、日本大使館のオフィスを訪問させていただき、スタッフの方々から多くの貴重なお話を聞かせていただいた。
そんな中私が一番興味深いと思ったのが、JICAが行っている一村一品プロジェクト(One Village One Product, OVOP project)である。一村一品プロジェクトとは、地域ごとに特産品をつくり、その特産品を付加価値の高い商品に変えて販売し地域経済の活性化を図るプロジェクトのことである。
中央アジア各国には鉱物や石油、天然ガスなどの豊富な資源が存在する中、キルギスにはそのような資源がなく経済発展が難しいのではと言われてきた。だが実際はキルギスにも質の高いハーブや羊毛、野生のベリー類などの資源が豊富である。今まで地元住民はそれらの製品化のノウハウを知らなかったため、本当は価値があるにも関わらず放棄したままだった。一村一品プロジェクトはこれら資源の製品化のノウハウを地元住民に教えることで、キルギスに今ある資源を利用して地域に特産品を作り出すことに成功したのだ。
この一村一品プロジェクトの特徴の一つが、フェルト商品は一つ一つ地元住民の手作りにこだわっていることである。それにより「ハンドメイドの高品質さ」という付加価値を商品に与え差別化をはかるほか、大量生産が行われなくなることで商品単価の低下を防ぎ、キルギスの人々が搾取されることを防ぐことができる。「先進国企業が建てた工場で単純な労働力として低賃金で働く」のではなく「地域にある資源を用いた製品を作るノウハウを身につけさせ、安定した収入を自身の手で稼ぐ」という搾取されない新たな賃金確保の形をキルギスの人々に与えられるのだ。これにより一村一品プロジェクトはキルギスに安定的な経済発展をもたらすことが期待できるのだ。