2023年6月23日(金)、第42回「中央ユーラシアと日本の未来」公開講演会を開催し、NHK国際放送局 多言語メディア部ディレクターの福田慧氏を講師にお招きして、「NHK WORLD-JAPANの舞台裏-ウクライナ侵攻後のロシア語・ウクライナ語発信強化の取り組み-」と題する講演をしていただきました。
筑波大学国際総合学類卒業の福田氏は、在学中に第3外国語としてロシア語を履修すると、ウクライナのキーウ国立大学に短期留学したことで、同国の言語状況に興味を持たれました。その後、東京大学大学院でウクライナの言語政策を研究した後、NHKへ就職、地方の放送局や国際放送局World News部での経験を得て、2020年から多言語メディア部のロシア語班デスクで活躍されています。
はじめに、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、NHK World Japanのロシア語コンテンツのサービスがどのように変化したのか、実際に放送された番組を取り上げ、詳しく解説してくださいました。ロシアによるウクライナ侵攻前のNHK World Japanロシア語配信では、ニュースや日本語学習コンテンツ、日本の文化や風習、季節の話題などを紹介するラジオ番組など、楽しいコンテンツを展開していました。
しかし2022年2月のウクライナ侵攻後があった後は、こうした番組にかわり、ウクライナに関するニュースが中心の放送に切り替わりました。NHK world Japanのテレビ放送はロシア国内でブロックされているため、真っ先に取り組んだのがラジオ放送の強化であり、ロシア国内に向けた信頼できる情報をラジオを通して届けることになりました。
また、ウェブサイトはロシア国内からも閲覧可能なため、英語配信番組で放送済みの、東京外国語大学で開催された反戦アート展の放送回にはロシア語字幕を追加して配信しました。侵攻後もキーウで創作活動を続けるウクライナ人アーティストや、政治的な発言をすることを恐れず作品を発表し続けるベラルーシ人アーティストの想いを番組を通して届け、大きな反響がありました。
新たにロシア語サービスに加えて、ウクライナ語のサービスも開始しました。主に、日本に住むウクライナ避難民向けに、ウクライナに関するニュース、避難民の生活やインフラ情報を彼らの言葉で発信しています。生活情報に関するページも開設し、病院へのかかり方、ゴミ出しのルール、子供の教育、日本のお金の使いかたなど、日本で暮らすうえで、ごく基礎的な情報を短くて読みやすい記事で紹介しています。さらに、今後のニーズが高まることを見込んで、「やさしい日本語」コンテンツもウクライナ語化して提供しています。
最後に福田氏は、ロシア語とのサービスの今後については、ロシア国内で情報統制が進む中でもあえて我々の放送を聞いてくれる人がいるということに重みを感じ、そうした人々に寄り添う放送、サービスを提供していきたいということ、ウクライナ語のサービスについても、ウクライナファーストで今後もコンテンツの充実を図りたいと、力強く述べられていました。