2023年5月26日(金)、第1回「トルクメニスタンとのCOIL型大学教育推進プロジェクト」として、NipCAプロジェクト実務責任者である、筑波大学 人文社会系 臼山 利信 教授による、アザディ世界言語大学日本語学部の学生を対象とした、「日本の地方自治体と『やさしい日本語』の普及・拡大」と題する特別講義が開かれました。Zoomを通して、トルクメニスタンからは24名の日本語を勉強する学生、教員5名が参加しました。

本講義は、日本で総人口、特に若年人口が減少を続ける中、在留外国人数が注目を集めている点に注目するところから始まりました。在留資格も大幅に緩和される中、今後も在留外国人の数が増えることが予想されます。実際、日本は移民受入国としての政策転換へと舵をきっています。

そこで、本講義では、在留外国人が住みやすい環境を考えるため、筑波大学のある茨城県の地方自治体の多言語対応の現状と課題として、茨城県内44自治体についての分析が報告されました。背景として、2011年3月の東日本大震災において外国人の犠牲者が多かったため、以来、災害を減らすための「やさしい日本語」の普及が重要視されていることがあります。茨城県の地方自治体のホームページを見ると、2言語以上の多言語に対応しているところが多く、最多では龍ヶ崎市が104もの言語に対応しています。ユニークな事例としては、民間のオンライン通訳サービスである「クラウド翻訳」を導入している、小美玉市の事例も紹介されていました。タブレット端末で通訳者を呼び出し、オンラインでリアルタイム通訳を行うサービスで、今後、導入が広がる可能性があります。

ただし、自治体のホームページに比べて小中高の教育機関、医療機関などは多言語対応が遅れており、小中高のホームページを自治体のホームページに取り込むなどの対策が考えられます。より大きな解決すべき課題としては、情報弱者である在留外国人住民の存在と尊厳をしっかりと意識すること、SDGsの理念と目標を自治体の多言語対応活動と連動させて、地域の問題を世界の問題としてとらえる認識を深めるか、といった議論があることも訴えられました。

また、講義の後半では、「やさしい日本語」研究の重要性と可能性についても報告されました。1995年1月の阪神・淡路大震災の際、災害情報を外国人被災者に伝達できなかった反省から生まれた研究です。講義では「やさしい日本語」に置き換える際の実例、自治体がコンテンツとして取り入れている例が紹介され、「やさしい言語」研究という、新しいこれからの研究分野があることが紹介されました。この研究には、防災教育・減災教育や多文化共生教育など、SDGsとも関連した課題を解決する非常に多くの可能性が秘められています。

講義の最後には、聴講者から、外国人が増えていることについて日本人はどう思っているか、外国人が日本に来日するとき、どういったビザでどれくらいの期間来日できるのか、といった質問が寄せられ、活発な質疑応答の時間になりました。筑波大学の授業を提供する「トルクメニスタンとのCOIL型大学教育推進プロジェクト」は今後も継続し、今年度、計5回の講義を予定しています。