石垣の活気ある風景の中で行われた研修旅行では、沢山のユニークな場所へ訪れることができました。その中でも印象深かったのは、石垣島ハーブ研究科、 入口初美氏の庭園です。この美しい場に一歩足を踏み入れると、私たちは多様な植物が生い茂る世界へといざなわれました。
入口氏は、明るい笑顔で迎えてくれました。庭園のガイドをしてくれる中で、葉や茎のひとつひとつに隠された秘密を解き明かしてくれ、彼女の仕事に対する情熱がひしひしと伝わってきました。
庭園は織物のタペストリーの様に、植物の不思議で満ちており、我々は様々なハーブの説明を受けました。
まずは「テリハボク」という植物に出会いました。その葉は、洗眼薬に使われるといいます。
丈夫な繊維を持つ 『苧麻(ちょま)』という植物は、希少な 『八重山上布』の糸の原料です。
『琉球よもぎ』は料理として、また伝統的な「よもぎ餅」の材料として、私たちの五感を楽しませてくれます。
『アキノネガシ』や『チドメグサ』は安眠と血圧対策に効果があり、『フーチバー』は筋肉痛を和らげるといいます。
また庭園には、雄大な『ヌマキの木』がそびえ立ち、繊細な『オキナワバラ』が庭に美しさを添えていました。海岸の砂浜や隆起サンゴ礁上に生える常緑低木『クサトベラ』も、南国ならではの植物です。 脳を活性化させる効果があるという『インドボダイジュ』と『ツボクサ』はこの庭園のハーモニーを形成していました。
庭園の奥に進むにつれ、ハーブの味にも豊かなバラエティーがあることを知り、私たちは驚きました。ある葉は酸味を強く感じ、他の葉からは、驚くような甘さがありました。沖縄の島とうがらしの辛さは、試食するのには勇気がいるほどでした。
庭園の散策に続き、私たちは体験活動に入りました。 入口氏は一人一人に『リュウゼツラン』を渡してくれました。リュウゼツランの葉からは繊維をとることができ、伝統的な縫い糸を作るのに使われる植物として知られています。私たちは集中し、繊細な繊維を丹念に分離し、エッセンスを秘めた糸へと変化させました。
その後、入口氏が自身の住居に招き入れてくれ、庭で収穫した新鮮な食材を使ったパイで私たちをもてなしてくれました。添えられたハーブティーは風味と香りが豊かで、彼女の庭の恵みをさらに際立たせていました。お菓子を味わいながら、入口氏は私たちが作った糸にまつわる興味深い伝統の話をしてくれました。
その昔、石垣島の人々は、この糸には着る人の力を他の人に贈ることができると信じられていました。このユニークな風習は、島民と自然界とを深く結びつけていたようです。
最後に入口氏は餞別として、緑豊かな聖域で過ごした時間を忘れないようにと、香りのよい植物を入れた瓶を一人一人にプレゼントしてくれました。
入口氏の庭は単なる植物のコレクションではなく、人間と自然との深い関係が記された証のようでした。そこでは伝統が栄え、知識が共有され、自然界の癒しの力が生きていました。沖縄の植物の素晴らしさを改めて認識した私たちは、感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、またこの特別な出会いに感謝しながら、この地を去りました。